手段


 
気付かれないならそれで良し
気付かれたのなら……………

開いた扉の向こう、まず見えたのは解放されたらしいモンスター
飼い馴らされる筈無いモンスターは、目に付いたモノ全てに襲いかかる
平然と施設内にモンスターを放ったならば、此処に居る兵士達はなんらかの対抗手段を持っているのかもしれない
モンスターの向こう側に兵士の姿が見える
余裕が伺えるその姿は、きっと想像が当たっている事を示している
絶大な効果が見えるソレは、侵入者であるスコールには解らない
兵士の数は2人
モンスターの数は………とりあえず3つ
こちらを注視していた兵士達の視線が緩む
それとほぼ同時に、モンスターが視線を向ける
獲物を見つけた歓喜、そして解りやすい程の敵意
身の竦む様な咆吼が響く
手に触れていた剣が引き抜かれる
抜き去った勢いのままなぎ払われた剣が、一匹のモンスターを切り裂く
智恵があるのか偶然なのか、スコールがモンスターを切り裂くのとほぼ同時に、左右から影が落ちる
飛びかかり攻撃しようとする気配を感じ、攻撃や防御では無く、そのまま前方へと無意識の内に身体が避ける道を選ぶ
唖然としたようにこちらを見ている兵士の姿
彼等が正気を取り戻す迄は幸いな事に少しばかり時間がある様に見える
モンスターを交わした足を止め、振り向きざまに剣を振るう
2匹目のモンスターの身体が切り裂かれた
傷を負い目を怒りに染めたモンスターが2匹、残りの1匹は怯えた様に距離を開けていく。
……残り時間は?
モンスターに対峙しながら、微かに響く震動を感じる
背後で小さな金属音が聞こえる
退路を塞ぐ様に背後には、2人の兵士が居る
アームを降りた今、当初の予定通り階下へ向かうには階段を使うのが当然と言える
その階段は、兵士の背後に存在する
モンスターが距離を詰める
吹き抜けになっている中央部分は、先ほどまで利用していたアームが収まっている
耳元で時間を告げる音が聞こえる
目の前のモンスターを退治して、兵士の相手をすれば
―――時間が足りない
浮上しきった建物は、1分後再び沈み始める
手の中の剣を片手で握る
攻撃を仕掛けようとするモンスターの動き
左手が、腰に下げていた小さな物体を引きちぎる
僅かに逸らしたスコールの身体をモンスターの攻撃がかすめる
手の中から滑り落ちた金属が立てた音が高く響く
一瞬遅れて、足下から広がる白い煙
反射的になのか、理解しての動きなのか、構えられた剣と、向けられた銃口
牽制する様にモンスターの眼前で剣を薙ぎ、小さな機械から吹き出し、急速に広がる煙を軽く巻き上げる様にスコールは兵士の方へと走る
欲しいのは一瞬の隙
目的は全滅させる事じゃない
ただ時間までに脱出すれば良いだけの事
兵士達の手前、辺りを覆い始めた煙の中、剣を足場に宙へと逃げる
頭上を飛び越えての着地
視界を埋める煙の中、スコールは階段へと足をかける
背後から聞こえる声
撃ち出された弾が見当違いの場所へ当たる
『そろそろ間に合わなくなるぞ』
背後を振り返る事無く階段を駆け下りるスコールの耳に、時間を告げる声が飛び込む
扉が使える時間は後少し
スコールの足が、最下層の床を踏む
身体を運ぶスコールの目に、大きく開いた扉が見える
少し段差を付けた扉の外に見える人影
『急げ』
大きく手招く姿と声が聞こえる
扉の外から伸びた手が身体をさらう
勢いが付いた身体が倒れる
振り向いたスコールの視界の中で、扉が閉まった
 

 To be continued
 
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