MD層
誰も足を踏み入れた事の無い場所
滅び去った文明の遺産
地下に通じている筈の通路は、故意か偶然か、厳重に塞がれていた
「気をつけてね」
そんな当たり前の言葉を残し、警告を発する為にキスティス達は学園内へと消えていった
「さて、行くか」
足下には強引にこじ開けた入り口が口を開けている
「灯、必要」
「あ、俺持ってるぜ」
一度も使われた事の無い施設、どれだけの機能が生きているかどうか解らない
最も生きていて貰わないと困るが、ソレがどこに有るかもわかっちゃいねぇ
「気がきくじゃねーか」
それまでの間、どうしても灯りは必要になる
「しっかり持ってろよ」
言葉と共に、サイファーは地下へと身を滑らせた
強固な扉はいつまで経っても壊れない
「なんでこんな頑丈なんだよ」
きちんとした部屋は客間のはずなのに、扉だけでは無く窓にも外側から鍵が掛けられている
「ここ客間のはずっすよね」
疲れたように零れた言葉が怒りをかき立てる
これはまるで、形だけ整えられた囚人の様
怒りのままに発しようとした言葉が止まる
手にぶつかった硬い感触
銀色のパイプで形作られた小さなテーブル
「どいて」
手に重いテーブルを振り上げ、窓へと身体を向ける
「ちょ、ちょっと」
「まずいっすよっ」
慌てたような男達の声に苛立ちがいっそう募る
勢いよく振り上げた手がガラスに向かって正確に落ちる
辺りへ、大きな音が響いた
澱み湿りを帯びた空気
手に触れる冷たい金属の感触
小さな灯りに照らされた床の上に見える粘りを帯びた液体
如何にも、といった雰囲気に自然と口元が歪み笑みを形作る
「なかなか面白そうじゃねーか」
辺りに満ちた嫌な空気、嫌な気配
念の為に、と持ってきたガンブレードへと手を掛ける
「敵」
前方を見据えて風神が呟く
高度な文明を誇ったセントラの遺跡
どういう仕組みかは解らないが、まだ生きていて稼働する筈の機能
こういった緊急の場合ならば、じっくりと観察する機会は無かっただろうが
「モンスターの巣窟って訳か」
ガーデンが出来てから10数年、平穏な時間は山ほど有った
それなのに、この場所が誰にも語られず封印されていたのは、つまりはそう言う事だろう
「おもしれぇじゃねーか」
一気に距離を詰めるモンスターの姿
握り締めた手に伝わる手応え
「行くぜ」
短い一言と共に、目指すシステムへ向け、モンスターを切り崩しながら一気に駆け抜けた
To be continued
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