MD層(2)
喉を閉ざす様な重い空気
湿った水の気配と
古びた匂いが蔓延っている
昔覗いた事のある、忘れ去られた遺跡に似ている
暗く、じめじめして、不気味な暗闇
……それでいてわくわくした感覚
「急がねえと、ミサイルがとんできちまう」
苛立った様で、怯えを含んだ言葉に笑いがこみ上げる
そういや、そうだったな
早いトコどうにかしねぇと、建物ごと吹っ飛ばされるんだったか
危機って奴なんだろうが
どうもそんな感じはしねぇ
ミサイルなんてのは、どうになりそうな予感がするぜ
足早に進む足下で微かに聞こえる水音
こんな場所には似つかわしくない嗅ぎ慣れた匂い
「―――オイル、か?」
どうやら、ガーデン内のオイルタンクから漏れ出ているらしい
「火、消化」
風神の言葉に慌てて火を消す気配が伝わってくる
「いざとなったら火をつけるぞ」
所々にある小さな水たまり程度じゃ燃え移った所でたいした被害にはならねぇ
むしろこのわけのわかんねえモンスターを倒すのに好都合だ
「肯」
「わかった」
くだらねぇ事を言い聞かせてる間にも、モンスターが顔を覗かせてやがる
そろそろ相手をしてるのも面倒になってきたな
「よし、走るぞ」
モンスターの相手は後回しにして、前方、出口へと走った
「どうやらあそこが目的地みたいだぜ」
少しばかり開けた場所
一見ドックの様にも見えるこの場所はどうやら機械部屋だ
その先、見下ろすように設けられた硝子張りの部屋
「造、同」
こういったところは
昔も今も同じ造りをしているものらしい
「解りやすくて良いんじゃないか?」
ま、今回ばかりはその意見に賛成してやるぜ
ガンブレードを肩にサイファーは悠然と足踏み出す
「おい、早く………」
「よく気を付けて歩けよ」
走り出したかけたゼルの足が止まる
鉄骨で組まれた通路の手前に悠然と現れるモンスターの姿
「こういう条件の良い所にはボスがいるもんなんだぜ?」
こいつらモンスターがその範囲に収まるかはしらねえが、野生動物なんてのはみんなそうだろうが
「んな事言ってる場合かよ」
ゼルが慌ててサイファー達の元へ引き返し構えを取った
タイミングを計ったかのように一足飛びに距離を縮めるモンスターの姿
「ゴールはすぐそこだ、手を抜くんじゃねーぞ」
払いのけるかの様に無造作にガンブレードを閃かせる
僅かに切り裂いた感触
「ちっ」
着地したモンスターが警戒した怒りがにじむ眼でこちらを睨み付ける
「よし、行くぜっ」
すぐ側を駆け抜けていく風
モンスターへと一撃をたたき込み、すぐさまその場を離れる
それと入れ替わりに飛来する風神の攻撃
「いいタイミングじゃねえか」
眼に見えるのは、2人の攻撃に僅かに怯んだモンスターの姿
考えるよりも早く、身体がガンブレードを振るう
重い手応え
刃を振るわす高音が響き渡る
モンスターの身体が崩れ落ちた
To be continued
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