海の傍の小さな孤児院 僕の記憶は其処が最初 あそこで一緒に暮らした友人達 同じ年頃の子供達と 一人だけ年の離れた少女 そして2人の大人、1組の男女 孤児院の責任者で、僕たちの親代わり 優しかったママ先生と……… 一度だって忘れた事のない記憶 シド学園長 ―――シド先生 もう一人の大人 「僕は全部覚えてる」 あそこで暮らした日々も、いつの頃からか深刻な顔を始めた先生達の事も、突然居なくなったおねえちゃんの事も 「君は………」 僕の存在に今ようやく気が付いたのか、不思議そうに見ている 「アーヴァイン?」 突然の僕の言葉に友人達が不思議そうな顔をする セルフィ、サイファー、キスティス、ゼル 一目見て直ぐに解った 残ったままの、子供の頃の面影 「覚えていない筈無いよね」 子供だった僕が覚えているんだ、大人の貴男が忘れる筈が無い 「アーヴァイン、……何故此処に?」 表情が変わった それって、僕が誰なのか気付いた証拠だよね 「どういう事だ?」 シド先生の様子に気が付いたサイファーの低い声が響く 本当はこのまま気が付かないふりをしていようと思っていたんだけど、おかしな事が多すぎるよ 何一つ覚えていない彼等 まるで何の関係も無い、ただの道具みたいな扱いをするあなたの態度 何処までも隠そうとしている関係や秘密 何が出てくるか解らないし、後から後悔するかも知れないけれど、納得する事の出来ない全部を暴いて見せる 「僕は“ママ先生”の暗殺を命じられたんです」 ゆっくりと強く口にした言葉 僕の視界の隅で、友人が小さな反応を示した 「すみませんが、私は君の様な生徒が居るとは……」 少し早口の口調が、慌てているって事を教えている “ママ先生”の暗殺なんて、僕とあなた以外にとっては意味のなさない言葉 今はまだそんなに慌てる必要なんか無いのに…… 「どうしてみんなが忘れているのか知らないけれど、僕は全部覚えてるよ、海に近い石の家、すぐ側に見えた灯台、僕たちが居た孤児院、何人かの子供と」 訝しげな表情、考え込むような仕草、苛立った様に机を叩く指先 彼等が思い出すかどうかは僅かな賭けだったけれど、どうにかなるみたいだ 「優しかったママ先生と、大好きだったエルおねえちゃん、それと……」 『シド先生』 僕と誰かの声が重なった 「“イデア”ママに“エルオーネ”おねえちゃん、………詳しい事を話して貰うぜ」 微かに強張った顔が、思い出した事を告げた To be continued
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