辺りを覆う緊迫した空気 「気を付けて」 “魔女”が見つめる視線に交じるのは冷たい殺気 戦いに身構えるサイファー達の目の前で、無表情に“魔女”が動き出す まるで見せつけるかの様に、右手が上がっていく 緩慢とも言えるゆっくりとした動作 指さす様にして差し出された腕 息を止める彼等の目の前で、残像を引くように幾重にも重なる掌 空気に伝わる微かな震動 掌を中心に生じる歪み まるで魅入られた様に引き寄せられる視線 掌に魔法が形作られる !! 暗示に掛かったように、霞掛かった頭 視線ごと縫い止められた身体 「避けろっ!」 意識が戻ったのは、収束した魔法の力に魔女の姿が隠れた瞬間 警告の言葉は、反射的に身体が動いたのと同時 視界の片隅を強力な魔法の力が通り過ぎていく 遠くは無い位置から聞こえる悲鳴、怒声 先ほどまで立っていた場所の、後方の扉が崩れ落ちる 以前対峙した時よりも、威力の増した魔法 憎々しげな言葉が耳打つ 避けた事に対する怒り これ以上無いほど明確な殺意 「お前等、油断するなよ」 此処にいるのは“敵” 昔の知り合いじゃ無い もしかしたら、なんて事はあり得ない幻想 攻撃を避け散った仲間の位置に視線を走らせる 同じように自分達の居場所を確認する仕草 魔女の正面を避け、魔女を囲む様に位置を取る ゆっくりと巡る魔女の視線 「目を見ちゃダメよっ」 キスティスの声に、はっとしたように背けられる顔 魔女の唇が微かな笑みを浮かべる 「危ない!」 魔女から出現した魔法の力が一直線に飛んでいく 視線を戻し、目を見張る姿 覚悟を決めた様に、避けるよりも、耐える為に身構える姿 視界を覆う閃光の中見えた光景 「頼んだぞっ」 言葉少なく、誰にとも無く掛けた言葉に答えが返る 魔法を使った攻撃の直後 “魔女”といえども、絶え間なく魔法を生じる事は出来ないはず なぎ払ったガンブレードの刃が魔女の身体を撫でる 微かによろめいた身体 振り返った魔女がを伸ばす 伸ばされた腕をかいくぐり魔女の動きを引きつけながら避ける 苛立たし気に表情を歪めた魔女へと左右後方から放たれる攻撃 凍り付いたかのように魔女が動きを止める 決まったか? 息を飲んだのは一瞬 「イデア様っ!」 どこかぎこちなく、声の方へ魔女が首を巡らせた To be continued
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