声と共に駆け込んで来たのは一人のガルバディア兵 その緊迫した声と、新たな敵の出現に、声の方へと流した視界の中に見えたのは、兵士の他に見覚えのある白い服の男 あいつは……… 「俺が席を外している間に侵入するとは………」 いらだたしげな声を上げ、武器を構えゆっくりと近づいてくる ―――パレードの時の奴か あの時、魔女イデアの直ぐ傍に控えていた男 新たな敵の出現に気がとられたのは一瞬 だが、その一瞬の間、自分に掛けられた声に反応を示さなかった魔女が動いていた 魔女へと向けた意識が捕らえたのは魔法のきらめき しまっ……… 襲いかかった光の塊がぶつかると同時に全身を襲った強い衝撃 無意識に喉から悲鳴が零れ落ちる 全身に身体の内部から突き上げる様な激しい痛みを感じる どこかで、言葉らしき声が微かに聞こえている 短いが長い苦痛の時間 「サイファー、大丈夫!?」 不意にクリアに声が聞こえる 身体に走っていた激しい痛みが、じくじくとした鈍い痛みへと性質を変える 反射的に上げた視線の先には、先ほどよりも奧へと立ち位置を変えた魔女の姿が見える そして、魔女を庇うように位置取った少年の姿 「イデアには指一本触れさせない」 「君の傍に居るのはイデアじゃないよっ」 ―――白いSeeDの1人 見覚えの在る少年の衣装に、唐突に浮かび上がった言葉 戦闘の合間に続く会話が、彼の立ち位置を知らせている そう激しくはない撃ち合いの中で、ガルバディア兵が突如崩れ落ちる 「彼は“魔女の騎士”らしいわよ」 魔女の魔法で生じたケガの治療をしていたキスティスが肩を竦めて告げた言葉が聞こえでもしたのか、ゆっくりと口元を歪め魔女が笑う 「笑えねぇ冗談だな」 特別な感情を抱かせる特別な称号、それはこんな醜悪なものに使われるものじゃない筈だ 癒しの魔法が効いたのか、単に痛みに慣れただけなのか、鈍くなった痛みに片膝を付いていた身体を起こしガンブレードを握り直す 「行けるみたいね」 安堵したようなキスティスの声 「サイファーーっっ!」 言葉を返そうとしたサイファーの声を封じる様に聞こえた声 聞き覚えはあるが、ここで聞くはずの無い声にサイファーは眉を潜め辺りを見渡す 「………なんだ、ありゃ」 魔女傍に転がされたリノアの姿 「………さっきのガルバディア兵がつれてきたのよ」 目的や利用価値は不明だが、バラムガーデン内部に居るはずの人間が此処に居る理由は 「まさかガーデンが………」 「違うみたいよ」 バラムガーデンが制圧されたという可能性はすぐさま否定された その上即答したキスティスの口調の冷たさから、ろくな理由じゃない事が予測できる 「細かいことは言いたくないけれど」 ウイップを手に戦いの中へと足を進める 「“友人”は選びなさい」 キスティスと共に戦いへと合流するのとほぼ同時に“魔女の騎士”が倒れ伏した To be continued
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