国境



 
海上を続く長い線路
大陸と大陸を結ぶ巨大な鉄橋
時は昔、エスタとガルバディアの関係が良好だった頃に全世界を結んだ巨大な鉄道
四方を切り立った崖と海に囲まれたエスタ大陸
海の上を延々に続く心許ない人工の道が、唯一エスタへと通じる道
外部からエスタへと入国するには、この道を使うしか手段は無い
だからこそ、このエスタへ至る道筋には幾台かの監視カメラが設置されていた

エスタへの入国者が居なくなって幾年
エスタの入り口を映し出す幾台かの機械は、来る日も来る日も同じ画像を流し続けている
変わるのは空の色、そして天候
好奇心を抱いて訪れる者も居なくなってから随分と月日は流れた
機械が置かれ、この部屋が緊張に包まれていた事も今は昔
誰一人訪れる人も居ない今、この機器の重要性は薄れ
変わらぬ景色ばかり映し続けて100日も過ぎた頃、この部屋に常設していた人は居なくなった
変わりに現れたのは、一つの別な機械
映し出される映像の先に何か変化があった時
―――一定の以上の大きさの生き物の反応
その時のみに異変を知らせる警報装置
長年沈黙を保ち続けていたソレが不意に鳴った
時間を置き、間隔を置き次々と鳴り響く警告音
それは明確な意思を持ってエスタへと近づく者の証
もはや記憶の中から忘れ反られようとしていたその部屋へと詰めかけた人々が見たのは幾人かの人の集団
「今すぐ連絡を入れろ!」
エスタ軍のごく一部で小さな騒ぎが持ち上がった

―――エスタへ向かう集団を確認
報告はすぐさま大統領官邸内大統領室と、軍上層部へともたらされた
近づいてくる者達の所属や目的の特定
エスタ大陸への上陸を果たした後の対応
そして、もしも仕掛けが見破られた時の手段
様々な情報や意見が各所を凄まじい勢いで駆け巡っていく
「よりによってこんな時に」
誰かが吐き捨てた言葉が響く
今、国内に大統領は居ない
そして軍司令官も、大統領補佐官も居ない
彼等は皆、今現在宇宙に居る
例え、緊急事態の帰国を願っても間に合わない
警備の者達から次々と飛び込んで来る情報
時間を置くに連れ詳しくなる報告は歓迎出来ない事柄を幾つか伝えてきた
特殊な武器の携帯
戦いに長けた人物達
やがて、緊急に呼び出されたオルロワの一言でその騒ぎは大きくなった

SeeD達と魔女
わざわざエスタまで何をしに来たのかは知らないが、送られて来た画像は確かに彼等のものだ
よりによって国の中核の3人の居ない時を狙ったかの様な事態に、上層部は大騒ぎだ
「一体何しにきたのやら」
いくつか考えられる可能性はある
が、問題は彼等と親しげに歩く魔女の存在
記憶が正しければ彼等は敵対していた筈だ
「重要な用件なのは確かだろうな」
時折見受けられる思い詰めたような真剣な表情
「………とりあえずは、侵入されたら不意を突いて捕らえる」
他の奴等が相手ならともかく、SeeDが相手では仕掛けの一部を見破られる可能性がある
「その後の事は話した状況によって、だな」
暗黙の了解で司令官代行を任せられた二人の言葉に、軍本部はすぐさまこの件に関して扱いを決定した
 

 To be continued


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