対面



 
出会いっていうのは、初めの印象が後を引く
それはどんな類の出会いにも言える事で
今回の様に複雑な事情が絡み合っているだろう話し合いの席に置いてはそれはかなり重要な位置を占めている
その辺りの事は良く解っている
好印象を持たれる為の対応対策の仕方も、少なくはない経験のお陰で身についている
だからこの面倒な会見もどうにかするだろうとそれなりの期待が掛かるのも当然というなら当然
常ならば、俺自身も上手いこと物事を運んだだろう
………今回のこの対面が初めてのものであったならば
せめて、俺と既に会っているという事実を覚えていなければ………
広くはない部屋に並んだSeeDの顔はどれもこれも知っているものばかり
多少施設が壊されようと、あいつが来るのを待っていた方が利口だったかもな
僅かな時間顔を合わせた大部分の奴等はともかく
「オルロワさん!?」
顔を合わせると同時に雷神の大声が上がる
困惑した様な声と、問いただす言葉
バラムからガルバディア迄の長時間、顔を見合わせていた2人は俺を忘れていてはくれなかった
騒々しい少年少女の声を聞きながら、耳を傾け状況を探る
それで、俺に対する印象はどんな感じだ?

わざわざエスタまで足を運んだ理由の1つ
探していた手がかりは至極あっさりと姿を現した
オルロワ
雷神が呼んだ名前は確かにソレで
言われてみればこの顔は確かに記憶の中にある
極めつけは、アーヴァインの確信に満ちた表情
「それで、わざわざ危険を冒して、こんな所までやってきた用件を聞いても良いか?」
騒ぎが収まる迄の間1つも口挟まなかった彼が頃合いを見計らっていたかの様に絶妙のタイミングで口を挟んだ

既に存在することすらも疑われて久しいエスタという国
エスタ国内に留まっているならば、話に聞いても実感として抱く事は出来ない事だが、国内に居る事よりも、むしろ国外を廻る事の方が多い人間には強い実感として感じる事の出来る事実
人々はエスタという存在を過去のものとして忘れ去ろうとしている
そんな存在も怪しい場所へ足を運ぶのはそれほどの強い事情があるということ
もっとも、彼等には、エスタが間違い無く存在するという事実を信じる為の材料はいくつかあった
例えば、自分達―――
最もだからといって自分達がそうだった様に好奇心で訪れる程、彼等は暇では無い筈だ
万が一、好奇心の赴くままの行動だとしても、敵である筈の“魔女”と共に行動する理由がない
それに
目の前に佇む“魔女”へとオルロワは興味深く視線を移す
静かに佇むその様子からは、以前目にした不気味な気配は感じられない
目に映るもの全てに向けていた憎しみの視線は穏やかなものに変化している
報告を聞いてから実際に姿を見るまでの間懸念していた、魔女による洗脳という可能性は今では欠片も残っていない
警戒していた“魔女”ではない魔女とSeeD達が連れ立ってエスタを訪れる理由
心当たりは全く無い、とそう言えれば良かったが1つだけ残されている可能性がある
どんな理由を示された所で、決して受け入れる事の出来ない申し出
今この地上に居るどんな人間にも決定を下す事の出来ない難問
もしかしたらというよりも、確信に近い心当たりを思いながら、彼等が自分達の口から用件を告げるのも待つ
「エスタに来た理由は複数ある」
言葉と同時にSeeD達の間で交わされた目配せ
「まずはオダイン博士に魔女について聞きたい事や、頼みたい事があるという事」
こちらを見つめる視線が、何事かを告げようとしている
一様に口を閉ざした顔見知りのSeeD達に代わって
「オダイン博士に会わせてください」
魔女と2人の少年の声が重なった
 

 To be continued


Next