魔女の騎士3



 
傷ついた身体
皮膚の上に滲む血
傷つき膝をつく彼の前に奇妙な生き物が浮かんでいた
そして、彼と彼等の周囲に存在する奇妙な空間
感じるのは、こことは違う異質の存在
“彼“が剣にすがりついて立ち上がる
それとほぼ同時に奇妙な空間が不意に消える
一瞬の
―――静寂
勝敗はついた、誰の目にも明らかに思えた事柄
「まだだ、まだ俺は負けていない」
必死な目をしていた

血を流して戦って、それは誰の為?
今、何の為に戦っているのか理解してる?
ちゃんと自分の感情は持っているの?

できればこれ以上の戦いは続けたくないけれど、相手に引く気が無いのは目に見えて明かで、そして僕たちは急いでいる
だからもう一度武器を構える
できれば、諦めて欲しかったけれど
もう、立ち上がってくる事がないように
祈るような気持ちで引き金に指をかける
―――もう、魔女の干渉が無ければ良い
不必要に戦いが長引かなければ良い
そんな事を思っていた

「止めなさいっ!!」
気が付いたら叫んでいた
いつもと同じように、昔と同じに
自分よりも年下の弟達のケンカを止める言葉
私の傍に集ってきた子供達を止める言葉
私の視界の中で、彼等が動きを止めた

「もうそこまでにしなさい」
ゆっくりとエルオーネが足を踏み出す
「もう、いいでしょ?」
“魔女の騎士”の元へと近づいていく
エルオーネの背後で、警戒したような目でスコールが剣を握る
「帰りましょう?イデアの元に、みんなの元へ………」
真っ直ぐに差し伸べられる手
浮かぶ微笑みに“彼女”の姿が重なった

ゆっくりと視線が巡る
「俺は、イデアをママ先生を………」
ぼんやりと零れ落ちる言葉
「それなら尚更、此処に居ても護れないわよ」
エルオーネの力強い言葉が響く
“魔女の騎士”の雰囲気が何処か変わる
幾度か繰り返される瞬き
「………エルオーネ?」
どこぼんやりした表情で“彼”がエルオーネの名前を呼んだ
 

 To be continued


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