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戦いが止まる
視線がゆっくりと巡る
不思議そうに、酷く戸惑ったように
「大丈夫?」
視線がエルオーネの前で止まる
幾度も繰り返される瞬き
“魔女の騎士”が纏っていた雰囲気が変わる
「俺………」
どこか頼りなさげな雰囲気に、エルオーネが優しい笑みを浮かべた

もう彼奴には戦う意思はなさそうだ
事情は良く分からないが、エルオーネとのやり取りに、サイファーはそう判断を付ける
もし、まだ勝負をするつもりがあったとしても、他の事に気を取られている今ならここを通り抜けることが出来る
まだ魔女は行動を起こしては居ないが、いつ気が変わるかわかったもんねぇ
なるべく急ぐ事
コレは譲れねぇはずだ
奴が戦意喪失している今は絶好のチャンスだ
まぁ、作戦の最終段階がエルオーネがいなけりゃ話にならないって事はあるが、戦いを始める事、“魔女アデル”を倒すこと位は出来る
まぁ、もし俺達が居なくなった後で奴が戦いを仕掛けてくる可能性もあるが………
―――後は任せるぜ
こちらへと視線を寄越した風神へと合図を送る
彼奴等に任せておけば、問題はねぇ
少し距離を置いた場所で、様子のおかしくなった“魔女の騎士”へエルオーネが話かけている
奴の頭の中からは俺達の事は消えている
「今の内に行くぞ」
小声で伝えた言葉にゼルがほんの一瞬目を見張り
神妙に頷いた

狭いとは言えない部屋の片隅、エルオーネからそう遠くない壁に背を預けラグナは室内を見つめる
エルオーネと“魔女の騎士”
離れた位置に立つSeeD達
エルオーネの直ぐ傍にいるスコールの姿
手の中にあるマシンガン
銃口は密かに“魔女の騎士”へと向き
態度の変わった相手にも決して警戒を解く事無く、1人1人の位置をゆっくりと把握する
―――おかしな行動を取る奴は居ない
“魔女”が介入している感じはしない
そして―――
SeeD達からも離れた端に1人立つ“魔女”にもおかしな所はない
魔女リノア
作戦の遂行には必ず必要な人間だが、この中で最も危険な存在
彼女は1度未来の魔女に操られている
1度起きたことは2度、3度と起きる
仕掛けてくるとすれば、きっとリノアを媒体にする
エルオーネの安全を気にしながら、ラグナはリノアの行動を見張る
「………ラグナ君」
視界の隅でSeeD達が動いた
 

 To be continued


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