魔女の城8



 
モンスターが吐き出した炎が、キスティスが立っていたその場所を嬲る
その瞬間、モンスターの左右からスコールとサイファー、2人のガンブレードがモンスターへと突き刺さる
モンスターの身体に震えが走る
モンスターが吐き出した炎の先に視線を走らせれば、ゼルに抱えられ位置を変えたキスティスの姿が見える
わずかな安堵と同時に
指先が引き金を引く
続けざまに響く複数の銃声
モンスターの口元から吐き出されたはずの炎がとぎれ、代わりに絶叫が漏れ出る
痛みからか、モンスターが強引に動き暴れ出す
ガンブレードを通して伝わる感覚
埋め込まれた刃にかかる重圧、衝撃
―――まずい
危険を告げる言葉が脳裏に浮かぶと同時に、モンスターの身体から刃を引き抜き距離をとる
ひときわ大きな咆吼とともに、激しく振り下ろされる腕、身を大きく捩る姿
離れるタイミングが遅れていたら、あの身体の動きに巻き込まれていた
「おいっ」
モンスターの向こうから聞こえたサイファーの声に重なるように響く銃声
モンスターの正面から、打ち込まれる弾丸
「任せてっ」
モンスターの後方へと回り込んだセルフィーが後ろ足へと根を振り下ろす
鋭い攻撃は、うまくいけば足を砕き動きを封じる事ができる
連続した攻撃にあがる咆吼
痛みにモンスターがターゲット変更する
背後と、正面に―――
スコールは彼等の行動の合間、素早くガンブレードの刃へと視線を走らせる
………目に見えた変化は見あたらない
衝撃で折れる事も亀裂が入る事も免れている
まだ大丈夫だ
モンスターの正面へと魔法が走る
身体をかすった魔法の衝撃にアーヴァインが悲鳴を上げる
そして、モンスターが向きを変える、背後のセルフィーを攻撃する為に………
―――いける
こっちは一連の攻撃で、配置を四方に散らしている
誰かに必ず攻撃のチャンスが回ってくる
モンスターは左前方へとセルフィーを配し、左腕を振り上げる
―――!?
明らかな不自然な体勢
「今がチャンスよ!相手は右側が見えなくなってるわ」
可能な限り幾度も打ち込まれたアーヴァインの弾丸は、モンスターの右目を打ち抜いたらしい
「よし、俺が左に回るからっ」
言葉と同時にゼルがモンスターの視界の範囲内へ飛び込んでいく
囮か
確かに逃げる事に専念すれば、ゼルなら攻撃が当たる事は無いはずだ
「よし、いくぜ」
弱点は右側
右側からの攻撃はモンスターには見ることはできない
彼等はそれぞれの武器を構え、モンスターの視野の外へと動く
モンスターが攻撃に気がつくとすれば、それは“気配”でのみ
その気配は、ゼルの動きに気を取られていれば感じ取ることはできない
だが、そううまくいけるか?
モンスターの攻撃は3種類、爪、炎、そして魔法
その攻撃は
「きゃっ」
近くに魔法を落とされたキスティスの悲鳴が上がる
そう、同時に出来た
細かい場所はわからなくても適当な位置に攻撃をする事はできる、それが特に攻撃の範囲が広い魔法ならなおさらだ
弱点はできた、それを有効に使う方法は?
目の前でサイファーとアーヴァインが攻撃を仕掛けている
見えなくても気配を感じる事ができるのか、モンスターの攻撃はゼルとサイファーへと主に向けられている
………………
近づけばそれだけ気配は濃厚になる、それならなるべく距離を稼げば………
「スコールっ!!」
少し離れた位置で考えこんでいたスコールへ、サイファーの怒鳴り声が飛ぶ
「てめぇもきっちり参加しろっ」
………試してみる価値はある
スコールは、モンスターの動きに注意を払いながら、キスティスの元へと近寄っていった

キスティスとセルフィーが足早にモンスターのそばを離れていく
モンスターへの攻撃は届く事はないと思われる距離
モンスターの注意が2人へと向かわないよう、スコールたちはモンスターの近くでさほどダメージにもならない攻撃を仕掛ける
タイミングを間違えば、味方にも被害が出る
緊張した空気が、4人の間に流れている
「今よっ」
背後から悲鳴に近いキスティスの声が聞こえた
それを合図に、彼等は、一斉にモンスターの側から逃げ出した
 

 To be continued


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