はじまり4
この力さえなくなれば、人へと戻ることが出来る
それは長い時の果てに行き着いた答え
確証も根拠も何もない答えだったけれど、私はその考えにとりつかれた
どうにかして力を手放す術を考えた
私の身体から魔力だけを抜き出す方法を考えていた
幾つもの方法を考えて
幾つもの方法を試して
どの方法も上手く行かなかった
私の身体から力が離れたとしても、それは僅か一瞬
すぐまた自分の元へと戻ってきてしまう
気が狂いそうなほど、幾度も同じ事を繰り返して
そうして訪れた偶然
偶然側に居た小さな生き物が私の魔力を吸い込んだ
ガキの声が聞こえる
良くは覚えちゃいないが、聞き覚えのある声
“魔女”はおぼつかない足取りで、声の方へと足を進める
―――魔女は後継者を見つける迄は死なない
よりによって、なんでこの場所に来やがった
今この場所に居る内の誰かが力を継げるとはかぎらねぇ
サイファーが知る限り“魔女”の力を継いだ者はいない
放っておいても何も問題は無い事なのかも知れない
「待ちやがれっ」
サイファーが声を上げるのとほぼ同時に“魔女”が足を止めた
力を手放しても己の元へと戻ってくる
力がなくならない限り死ぬことは出来ない
力を欲した“私”に相応しい強固な呪い
その呪いから逃れる術を私は見いだした
力を望まないこと
力を疎むこと
―――他の何者かに力を押しつけること
漸く見つけ出した答えに、力を奪い取った魔物へとこの力を戻すことを試みた
幾度も回数を重ね、幾日もの時間をかけて
僅かな力を受け渡すことで満足していた
けれど、気が遠くなる作業に、私は厭きた
そうして、どれほど長い時間が経っていたのか、世界は再び争いに満ちていた
遠い日の私の様に、世界には力を求める人が存在していた
凍り付くような冷たい風が吹く
“魔女”の声がほんの少し力を失う
「力を欲する者、それが“魔女”の条件」
紡ぎ出される真実の言葉
「本当は“魔女”に資質など存在しないの、必要なのはあの時の私と同じ位の強い望み、力を欲しているかどうかという事だけ」
幾つもの後悔の叫びが聞こえる
To be continued
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