英雄とモンスター(4 SideS)


 
スコールの目の前には、モンスターが立ちふさがっていた
ガンブレードを構え正面から斬りかかる
振り下ろした腕に肉を切り裂く感触が伝わってくる
痛みに身悶えるモンスターの身体から、ガンブレードの刃が抜け掛ける
スコールは、力ずくで刃をねじ込み引き金をひく
鈍い音をたてて弾丸が発射され、振動で動く刃が肉をえぐる
弾丸が発射されたその反動を利用して、スコールはモンスターから離れる
着地したスコールの視線の先で、モンスターが咆吼をあげる
ガンブレードを構えるスコールへ手傷を追い、凶暴化したモンスターが襲いかかる
鋭い一撃をガンブレードの刃で弾き、返す刃でモンスターを斬りつける
長く絶叫を上げモンスターは息を止める
モンスターが生命活動を停止した事を確認すると、脇を通り抜け先を急ぐ
モンスターが死んだのを確認して移動するのは、死にきれていないモンスターの必死の攻撃を背後から受ける危険性をさける為
道を遮り、立ちふさがるモンスターをスコールは排除し、先を急いでいた
まずはモンスターの発生源をどうにかすること、取りこぼしはそれからでも遅くない
スコールは、モンスターが現れる方へと急ぐ
何かに気づいた様に立ち止まり、幾分顎をあげる様にして前を見据える
来るっ………
前方から新たなモンスターの気配
人々は息を潜め静まり返っている
数が多いな……
生き残りにしては多すぎる気配がする
遠くで微かに銃声が聞こえる
きっと、軍が動いているのだろう
それならば、取りこぼしたモンスターは、後から来る兵士達が片づけるはずだ
それにしても、これだけのモンスターを見逃していたのか?
現れるモンスターの数、感じ取れるその気配は、半端ではない
エスタの街中では、モンスターは一掃した、と言っていたはずだ
命じられた任務はモンスターの殲滅
………いい加減だな……
この状態で、一掃したという報告、そして真実を確かめなかった相手に無性に腹が立つ
スコールは、タイミングよく現れたモンスターに“飼っていたんじゃないか?”という疑問を覚えずにいられなかった
……そこまでいい加減でもない、か……
人々を危険にさらすような真似はしない、だろう……
今回の任務は、モンスターの殲滅
事態は当初の目的と多少のずれが生じたが、仕事をしない訳にはいかない
視界の先にモンスターの姿が見える
構えた掌に魔法が凝縮される
まだ遠い………
スコールは、モンスターとの距離をはかる
掌に光が生まれる
スコールを見つけ突進してくるモンスターに対し、魔法を放つ
モンスターを中心に爆発が起きる
光に隠れる様にして、ガンブレードを引き下げ走る
魔法の力にどうにか、モンスターが耐えきったその瞬間、ガンブレードが突き刺さった
条件反射の様に繰り出される攻撃は、スコールにかすりもしない
ガンブレードを動かし、モンスターの肉体を切り裂く
あがる悲鳴は弱い

刃先が伝える来る感触がいつもと違う
……やわらかいな……
絶命したモンスターから、ガンブレードを引く抜く
ずいぶんとあっさりと息を止めた様に感じる
…………まだ身体ができていない?
成体へ変化した虫は、身体の外郭が柔らかい事が多い、もし、モンスターにもその法則が当てはまるのならば………
…………今は、考えてる場合じゃないな……
スコールは考えるよりも、先へと急ぐ事を選ぶ
モンスターが現れる方角は常に一定
それから考えるならば、きっとモンスターの発生源は1つだろう
ガンブレードを一振りし、中心街へと一直線に走った

失敗した………
油断無い目で辺りを見渡す
予想外に人々の生活区域に近い場所にモンスターは巣くっていたらしく、スコールはショッピングモールのほぼ中心地で、現れるモンスターを相手にしていた
次々と現れるモンスターを倒し、先に進む内に知らぬ間にモンスターの群に囲まれていた
エスタ兵はまだ現れない
……遅い………
先ほどから銃声がとぎれがちに聞こえる
スコールは、建物を背にしモンスターを牽制する
連続した軽い音
状況を好転させる為に魔法を使おうとし、その音に気を取られる
……軍じゃないのか?
銃声の距離の割に声が聞こえない
左前方のモンスターに“ストップ”をかける
目の前の空気が切り裂かれる
脇から飛び出してきたモンスターの一撃をスコールはかろうじて避けた
兵士達の支援が得られる可能性が低いとなると、状況は圧倒的に不利だ
……仕方ない……
スコールは覚悟を決め、モンスターを見渡した
一度体勢を立て直そう……
ガンブレードを構える
スコールの攻撃は前方のモンスターを一撃の元に粉砕した
だが、スコールが攻撃するのを見計らったかの様な一撃が背後から襲う
前方に穴を開け、そこから外へ脱出しようとしたスコールの目論見は実行する前に阻まれる
攻撃を避け、バランスをくずしたスコールに、待ちかまえたかの様なモンスターが襲いかかる
「スコール!」
モンスターの攻撃に身構えたスコールの耳に自分の名前を呼ぶ悲鳴の様な声が聞こえた
振り下ろされる攻撃をなるべくダメージが少なくなるように、身をよじり交わそうとする
間近に生き物の気配を感じる
衝撃は、なかなか訪れない
「大丈夫か?」
至近距離からの声
振り返るスコールの目にモンスターの攻撃を受け止めているラグナの姿が映る
ラグナ!?
驚きのあまり呆然と見つめていると
安心したように笑顔が向けられる
「あんまり無茶するなよ」

 
 
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