英雄とモンスター(5)


 
彼は魅入られたようにその光景を見つめていた
はじめは、後から現れた大統領の事もSeeDの仲間かと思った
「すごいな………」
言葉を交わすことなく無言で繰り広げられるコンビネーション
息をのんで、2階の窓からその動きを見ている
本当ならば、援護に駆けつけなければならないのだろう
実際、大統領の正体に気づいた時に先ほど借りた銃を持って出て駆けつけようとした
だが、何かを気づいた様に窓を見上げた大統領と目が合い
慌てて階下に降りようとしたところ、視線で待機するよう命じられた
確かにろくに武装もしていない自分が参加したところで、あの2人のじゃまになるだけだろう
下手をすると、モンスターの攻撃に耐える事もできないかもしれない
視線の先で鮮やかにSeeDが敵を倒す
扱いが難しいと言われるガンブレードを軽々と操る姿
的確な判断力、無駄のない動きに目を奪われる
これが最強と言われるSeeDの実力………
軽々とガンブレードを操る姿に、もしかしたら自分も簡単に扱えるようなそんな錯覚を覚える
魅入られる様に見つめる彼の耳に、軽いマシンガンの音が響く
転じた視界に大統領の姿が入り込む
軽いステップでマシンガンを乱射する
向けられる銃口は確実にモンスターをとらえている
そう、大統領の事も彼には意外だった
大統領の話の中にはドラゴンを一撃で倒した等という、眉唾物の話もあったが“強い”という事は聞いていた
強いとは聞いてはいたが、まさかSeeDのサポートをでき………
「え!?」
大統領の姿を追い、偶然目にしたその光景に彼は目を見張った
まさか…………
信じられない思いを抱いて、彼は、その動きをじっと見つめる
武器を構え、SeeDが、モンスターに攻撃を仕掛けた
同時に右手にマシンガンを構え、油断なく辺りを探る
マシンガンの銃口が一匹のモンスターに向けられ、連射される
右腕一本で支え、連射しているマシンガンに左手が添えられ、最後に身体が移動する
SeeDが一連の攻撃を終え、安全な位置に下がってくる頃には大統領は、なにごともなかったかのように、マシンガンを構えている
「まさか………」
呆然と続く大統領の動きを見ている
攻撃を仕掛けようと動く直前にさりげなくSeeDの動きを妨げないように、動きやすいように場所を移動する
SeeDが再び攻撃を仕掛ける
それにあわせ移動
SeeDは、背後の動きに気づく事なくモンスターを攻撃する
………実際に攻撃しているのは、SeeD………
近づくモンスターに大統領のマシンガンが撃ち込まれる
攻撃を受け、狂ったように暴れるモンスターにガンブレードの刃先がたたき込まれる
攻撃を負えたSeeDが戻る位置は、予め大統領が安全を確保した場所
何事もなかった様に
何事にも気づかなかったかの様に
攻撃は続けられる
印象が変わったが、大統領がしていることは、サポートだ
だが…………
彼は、混乱する
視界の先でSeeDがモンスターを攻撃している
大統領の銃口が動く
SeeDの後方から近づいたモンスターが吹き飛ばされる
はじかれたような大統領の動きに慌てて目を凝らす
………………………!!
大統領の左側からモンスターが攻撃を仕掛けていた
警告の声をあげる事もできない
次の瞬間、襲いかかったモンスターが悲鳴をあげる
何が…………
マシンガンの音、モンスターは後方へ吹き飛んだ
早すぎる大統領の動きに何が起きたのか把握できなかった
………左手には、いつの間に現れたのか、短剣が握られている
不自然な形で掲げられたそれは、襲いかかったモンスターを斬りあげたもの、だろうか
モンスターを吹き飛ばしたマシンガンは、その左腕の下をくぐり銃口がモンスターへと向けられている
振り返る事なく、繰り出されただろう、その攻撃でモンスターは即死している
呆然と見つめる中
「スコール!!」
大統領の声が響く
動かした視線の先にはモンスターの攻撃にはじきとばされるSeeDがいた
 
 
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