英雄とモンスター(6 SideL)


 
左手に肉を切り裂いた感触が残っている
あ、やべ………
近づいた殺気に、考えるよりも先に身体が動いていた
見られたよなぁ……
言い訳の言葉が頭の中に次々と浮かんでくる
そっと、窺って見てみると、案の定信じられないモノをみたって感じでスコールが立ちつくして……
「スコール!!」
こんな状況で立ちつくしたりしたら何が起きるかは、すぐに想像できる
呆然と立ちつくすスコールに、当然の様にモンスターが襲いかかる
俺の警告の声は僅かに間に合わない
モンスターの攻撃にスコールの身体がはじきとばされる
ちくしょうっ、間に合えっ!!
モンスターにはじき飛ばされるスコールの元に必死で走る
“ズシリ”とした重みが腕にかかる
一緒に飛ばされそうになるその衝撃をどうにか吸収できた
あ、あぶねぇ〜
こんな時に倒れたりしたら命取りだぞ
………俺も巻き添えになったらもっとやばいけどな……
冷静に考えれば、ここで受け止めようと行動する事もマイナスの要素だろう
まあ、動いちまったものはしょうがないよな?
数はだいぶ減らしたとはいえ、まだモンスターはいる
倒れ込んだ所に襲いかかられでもしたら………
「……大丈夫か?」
ショックが大きいのか、なかなか動かないスコールが心配でそっと声をかけて見る
「…………ああ…………」
俺の声に応えてスコールは、自力で立った
お、これなら大丈夫だな
ふらつく様子もなくしっかりと立っている
モンスターの一撃を無防備に受けた影響が心配だったが、どうやら大丈夫の様だ
こいつも結構丈夫だな……
「……敵を引きつけてくれるか……」
うん?
スコールの言葉に俺は違和感を感じた
敵を引きつける事位ならいくらでもやってやる……が……
スコールの視線の先にはガンブレードが転がっている
そう言うことか……
そうだよな、なんの理由もなく、スコールが頼み事なんかしないよな
あんまり頼りにされないこの状況に思わずため息を付いていた
モンスター達がじわりと近づいてくる
そんな事考える場合じゃなかったな……
どうも、状況を把握せずに考え込みそうになってしまう
わずかに動いたが、モンスターが攻撃してくる様子は見られない
警戒してるってことか?
それなら好都合だが、ここで武器を持たないスコールの援護というのは……
「しゃーねーな……」
ラグナは右手のマシンガンをスコールに押しつけた
俺が行った方がいいだろう?
「おい……」
押しつけられたマシンガンをスコールは返そうとする
そっか、スコールは、知らないもんな……
スコールをあえて無視しラグナは、ガンブレードの方へと移動する
手榴弾を忘れたのは失敗だったな……
背後でスコールがマシンガンを構えた気配がする
よしっ
気合いを入れるとラグナは、モンスターの方へと飛び込んだ
スコールの持つマシンガンが、ラグナに攻撃を仕掛けようとしたモンスターへと火を吹く
軽快な音を聞きながら、モンスターの間をすり抜け、ガンブレードを拾い上げる
!!
背後に不穏な気配を感じる
「ーっ、後ろっ!」
ちょっと警告が遅いぞ………
のんきな思考に反して右手は生存本能のままにモンスターをまっぷたつに切り裂いた
二つに分かれたモンスターの間から、驚きに目を見開くスコールが見えた
…………言い訳のしようがないかな……
せっかく思いついた言い訳の数々が使えなくなった
こうなったら仕方ないよな……
刃の根本にある細工を動かす
ガンブレードの切っ先をスコールへと向け、刃先を傾かせ角度を調整する
狙いを定め、ラグナはガンブレードの引き金を引いた
こうすれば銃としての使い方も可能だったはずだ
打ち出された弾丸は、綺麗な軌跡を描きモンスターへと撃ち込まれた
弾丸がかすめた事で正気に返ったスコールが振り返りモンスターをしとめる
「スコール、今の内に一掃しちまえっ!」
G.F.は精神に影響するから、あまり使わせたくはないんだけどな
しっくりと手になじむガンブレードを構える
時間を稼ぐ為にモンスターの群へと飛び込んでいく
スコールに召還されたG.F.がその姿を現す
モンスター達はG.F.の一撃でその息を止めた―――
 
 
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