英雄とモンスター(7)
ウォードの指示に従い駆けつけた兵士達は、ショッピングモールに横たわるモンスターの姿を目撃した
現場には、不穏な空気をまとったSeeDと、疲れたようにたたずむ大統領の姿があった
兵士達は、2人の指示に従いモンスターの発生現場を探した
――――エスタごみ処分場――――
その施設は、案外ショッピングモール街から近いところに位置していた
処分場を兵士達が取り囲んでいる
彼もまた、休日を自ら返上し、その兵士達の中の一人に混じっていた
ごみの中にグロテスクな姿をしたモンスターの幼生体らしきものが見え隠れする
自ら志願したとはいえ、そのあまりの不気味さに自然に視線がそれる
他の兵士達も似たような状況だ
平然と見つめるのは、大統領とSeeD、一部の大統領補佐官位なものだろう
こんなところでも実力の差がでるのだろうか?
確かに、相手がどんな姿をしていようとも、その姿を見なければ攻撃する事はできない
………もっともあの方達ならば目をつぶっていても大丈夫だろう
「モンスターの幼生体を見たことはあったか?」
不意に問いかけられた大統領の言葉に兵士達は一斉に首を振る
モンスター自体、あの事件が起きるまでめったに見る事はなかった
「……………」
大統領の側近くにいた、SeeDは嫌そうな顔をしただけで、特になにも言わない
こんなものを良く見ていられる……
物珍しいそうに光景を見つめる大統領に関心してしまう
「………それで、焼き尽くしてもいいのか?」
不機嫌そうなSeeDの声
何を思っているのか、大統領が空を見上げる
「……ラグナ大統領……」
ささやくように答えを促す側近の声が聞こえる
「景気良くやっくてくれ」
大統領の言葉に、SeeDは不思議な構えをとる
先ほどG.F.を召還したときと同じ構え
空が暗くなる
赤い色彩が、上空に出現する
……G.F.………
先ほど目にしたものとはまた別の種類のモノの様だ
「……イフリート……」
兵士の間からひきつれた、声が聞こえる
SeeDの召還に応えたイフリートは、魔法の炎を生み出す
燃え上がる炎は、ごみとモンスターのみを焼き、消えていく
滅多に見ることのできないその光景に目を奪わる
やがて、炎が消える
視線の先には、半ば焼けたモンスターの姿が見える
先ほどよりも数倍グロテスクな姿
死にきれなかったらしいモンスターが蠢めく
彼は、耐えられなくなり、顔を背けた
「今だ、撃て!」
号令に反射的に構えた銃からが一斉に火をふく
背けたままでも銃を乱射する事はできる
戻した視線には打ち出される弾丸と、巻き上がる砂埃でモンスターの姿は見えない
停止の指示が出されないままに、弾丸がなくなるまで乱射する
弾が尽きるまで撃ち尽くしたその後には、無数の弾丸を身に受け、千切れ飛んだモンスターの肉塊のみが残っていた
言われなければこれがモンスターだっととは解らないだろう
ゴミ処理場に、人工の火が放たれる
二度とモンスターが生まれる事の無いように徹底して焼き払われる
大統領は自分たちが注目する中、隅々まで確認の為に視線を走らせる
同時に状況の報告を受けている
大統領が納得したように頷いている
大統領の合図を受け
「モンスターは、退治する事ができた、今日はゆっくり休むといい」
司令官の解散命令が下される
「はっ!」
一斉に敬礼する彼等の前で大統領は、SeeDの元へと歩み寄っていた
語りかけた言葉は聞こえない
「………少し話がある」
SeeDの言葉に大統領は黙って頷く
そして、周りの視線を気にもとめずに2人は連れだって歩き去っていった
後日彼は、親子喧嘩で、大統領官邸の一室が破壊されたという噂を聞いた
あの日の戦闘の様子をつぶさに見ていた彼にとっては、信頼性の高い噂だった
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