英雄とモンスター(6 SideS)


 
一瞬感じた凍り付くような強い殺気にスコールは振り返った
吹き飛ばされるモンスターの姿
ラグナの左手の下に回されたマシンガン
至近距離からの威力は凄まじいものらしく地面に叩き付けられたモンスターは、絶命している
ラグナの左手に握られている短剣はモンスターの体液に濡れている
まさか…………
俺は信じられないものをみた思いでラグナを見ていた
俯いたその顔から表情は見えない
窺う様な視線を感じる
「スコール!!」
警告をふくんだラグナの声に迫り来るモンスターを知覚した
しまった――
弾かれたようにこちらに向かうラグナの姿が見えた気がした
身体に衝撃が走る
気づいた時にはすでに遅く、スコールは無防備にモンスターの一撃をその身に受け、勢いよくはじき飛ばされた
手の中からガンブレードがこぼれ落ちる
地面に叩き付けられるだろうその衝撃に身構える
身体は、思いの外柔らかく受け止められた
なんだ?
受け止めたソレは、温かく体温を持っている
腕に早鐘の様に脈打つ鼓動を感じる
…………なにを考えて………
俺を受け止めるという暴挙に出たラグナに怒りを通り越し呆れ返る
よほど自信があったのか、何も考えていないのか
……きっと、おそらく後者なのだろう
「……大丈夫か?」
至近距離からの静かな問いかけ
声には心配する様子がにじみ出ている
「…………ああ…………」
何をやっているんだ……
受け止めたラグナの腕から逃れスコールは、立ち上がった
軽く動かした腕に痛みは感じない
平衡感覚も乱れてはいないな
思ったよりもダメージを受けていない
これならば充分に戦う事ができる
攻撃に転じようとして、ガンブレードを握っていない事に気が付く
先ほどの攻撃でガンブレードを取り落とした事を思い出す
慌ててスコールは、はじき飛ばされたガンブレードを探す
あった………
モンスターの後方に静かに横たわっている
「……敵を引きつけてくれるか……」
不本意だが、援護もなしに拾いに行くわけにもいかない
その間に取り戻さなくては
ラグナが攻撃を始めたらいつでも動ける様に僅かに身を落とし、構える
背後から小さくため息が聞こえた
ゆっくりと近寄ってくる気配
だが攻撃する様子はない
不審に思い警戒しながらもスコールは、ラグナに視線を走らせた
「しゃーねーな……」
言葉と同時にマシンガンを右手に握らされる
何をするつもりだ?
疑問に応える様に投げかけられた視線は何かを伝えようとしていた
「おい……」
危険だ!
モンスターへと近づくラグナに慌ててスコールは、マシンガンを返そうとした
スコールを無視して、ラグナは歩いていく
周囲のモンスターの気配が変わる
くそっ!
スコールは、モンスターを警戒し、渡されたマシンガンを構える
突然、ラグナがモンスターの懐へと飛び込んだ
スコールは、とっさに引き金をひいた
モンスターの間を潜り抜けラグナはガンブレードを拾い上げた
ガンブレードを受け取ろうとしたスコールの手が僅かな間止まる
モンスターがラグナへ……
「ーっ、後ろっ!」
攻撃をしかけ、ラグナに当たる危険性に思い当たる
ためらいが反応を遅らせた
身体の血が音を立てて引いていく
間に合わなかった、という恐怖に身を固くするスコールの目の前でモンスターがまっぷたつに両断される
右手に持ったガンブレードでモンスターを切り裂いたラグナの姿
そんな………
堅いモンスターをまっぷたつに切り裂くなど、ガンブレードではできない
視線の先でラグナは困ったような顔をする
ガンブレードの切っ先がスコールへと向けられる
ラグナの指が引き金を引く
かすめるようにして飛んでいった弾丸
!?
本来ガンブレードから弾丸が打ち出される事はない
スコールは振り返り、背後に迫っていたモンスターをしとめる
「スコール、今の内に一掃しちまえっ!」
ガンブレードを持ったラグナがモンスターの一群に飛び込んで行く
今は確かめる時間がない
ラグナの微かな声に従いスコールはG.F.を召還した
後で必ず聞き出す
スコールに召還されたG.F.が姿を現す
モンスター達はG.F.の一撃でその息を止めた―――
 
 
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