英雄達の舞台裏
(1 SideK)
それに気づいたのは、ようやくルームサービスが現れたとき
正確にはなかなかこないサービスを呼び出した時、というべきか
内線の呼び出しに応じた従業員の声、そして背後から聞こえる物音
キロスは、用件を手短に告げると、背後を振り返った
「どうやら、事件が起こったようだ」
『また、か?』
また、だ
ラグナと出かけると大小は様々だが、トラブルに巻き込まれる事が多い
もっとも、小さなトラブルの場合は、ラグナ自身が元凶だが……
「詳しい状況は解らないが、程なく向こうから訪ねてきてくれる」
電話でこちらの居場所を教えた、何か事を起こすつもりならば、確実に人がいる場所から行動を起こすだろ
「さて、それでは出迎えの準備でもしておこう」
捕まって相手の出方を見るのも一つの手だが、この場合それが得策とは思えない
捕まるには情報が少なすぎる
何を目的としているのか、どれくらいの勢力なのか、何をしているのか、これらを知っていた方がこれからの行動を有利に進める事ができる
「私が応対に出よう」
キロスの言葉を受けて、ウォードが気配を断ち姿を隠す
念のため、というやつだ
多少でも相手の油断を誘えれば決着も早くつくだろう
扉の前に人の気配を感じる
キロスは、ウォードと視線を合わせ、行動を起こすタイミングをはかった
「どうやらこのホテルは、テロリストに占拠された様だな」
踏み込んできた相手を捕らえ、一緒に現れた従業員から情報を聞き出すのは容易な事だった
テロリスト、確かに彼等からしてみれば、各国の著名人が集まったこの日は、自分たちの存在を世間に知らしめるには、良い機会だろう
なかなか楽しい事になった……
キロス達は、犯人を部屋の奥へと隠し、ひとまず部屋から離れる
他の物達がなかなか戻らない仲間を捜しにこないとも限らない
だいたいの人数は把握できたが………
彼等がホテル内で何をしているのか、詳しい事が解らない
「さて、この場合だが……」
通路の死角にあたる場所へ、キロス達はひとまず身を隠す
十数人程のテロリスト達を1人1人消していくか、一気に片を付けるか……
『なんの仕掛けもないはずはない』
そう、まず確実に人質を取っているだろう
…………厳密に言えば私たちも人質の中に入るだろう……
足音が聞こえる
人数は、3人
「のろのろするな、妙な真似をしてみろ……」
これは好都合だ
テロリスト達は、捕まえた人質をどこかにつれていくつもりらしい
確かに、分散させておくよりも、自分たちの監視下にひとまとめにしておくほうが危険は少ない
影に隠れたキロス達に気づく事なく、目の前を通り過ぎていく
人質の方はラグナに任せて問題はないだろう
「では、ラグナ君が動き易いようこちらも行動を起こすことにしよう」
まずは、ホテルの現状の把握
ホテル内の人間が、すべて集められた時点で本格的な行動をとるのが得策のようだ
人質となる物達には悪いことをするが、ひとまず、犯人達に見つからないように、キロス達は行動を起こした
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