英雄達の舞台裏
(2 SideI)


 
予想通り、地下水路はホテルへと続いていた
なんとか地上へ抜け出た先は、ホテルの裏側にひっそりと作られた人工庭園
少しばかり高い位置にあるその場所は、2階へと続く窓があった
「まさかこんなところに出るなんてね……」
「ちょっと予想外だったよね」
ホテル内に潜入したのは、アーヴァインとキスティスの二人
ゼルとセルフィの二人には、ホテルの外でのフォローを頼んでいる
「キスティスは、ホテル内の地図覚えてる?」
位置関係は、きちんと覚えて置いた方が良いもんね
「まさか、こんな事になるとは思わなかったから詳しく見てはいないわ」
やっぱりそうだよね……
「じゃあ、はじめに館内地図をさがそうか」
位置関係の把握は大切だしね

「まいったわね」
テロリスト達は、爆弾を設置しながらホテル内を移動していた
「結構数が多いからね」
一番はじめは、テロリストと鉢合わせて、ホテルの泊まり客(その通りだけど)と相手が勘違いしてくれたおかげで、不意をつく事ができた
物陰に引きずり込んで身体検査をして、尋問をして……
結局本人の口から有意義な情報はなに一つ得る事はできなかったけれど、持ち物の中から、一つの爆弾を見つけた
爆弾を全部見つけだして解体するのは、不可能
とりあえず見つけた爆弾の処理に留めて、テロリストの無力化を優先する
「これで、ここにある分は全部終わったよ」
急いだ結果なのか、爆弾の作りが簡単だったのが救い
「そう、じゃあ、先を急ぎましょう」
テロリストの数は十人を越すらしい、倒した人数から差し引いてもまだまだいる事になる
「そうだね、倒れてる仲間を発見されたりしたら、面倒な事になるものね」
見つからない所に隠して来たとはいっても、いつ気がつくか解らないし、誰かが探しに来ないとも限らない
アーヴァインは、ため息をついて、部屋を出ようとするキスティスに従った
「誰か来たわ」
扉の外に足音、そして、名前を呼ぶ声
「ついに来たみたいだね」
きっと、呼ばれている名前は、今倒したばかりの相手だろう
「黙って」
扉に体を張り付け、キスティスは、飛び出すタイミングをはかっている
相手は1人みたいだね……
壁に耳を寄せ、外の物音を確認する
足音が通り過ぎる
キスティスが素早く扉を開けた
重い物が当たった音がした
キスティスに続いて慌てて、ドアの外へ飛び出すと、扉の直撃を受けた男が、キスティスに投げ飛ばされ宙を舞っていった
「あんまり派手な事はしちゃダメだって」
そんなに派手な事をすると、また誰かくるかもしれないよ?
キスティスにそう言おうとしたとき、近く階段に人の気配がした

顔を見合わせ、そっと、身を隠す
気づかれてるかもしれないけど、警戒はする方が良いよね
「おっと、攻撃はしないでもらいたいものだな」
そう言いながら現れたのは、キロスさんだった

「じゃあ、スコールとラグナさんがいるんだ」
僕達は、近くの一室で、情報を交換していた
キロスさん達がなぜこのホテルにいるのか、気になる事も多かったけれど、今はそういう話をしている日はない
僕たちが話せる情報はすくなかったけれど、彼等が持っていた情報は貴重なものが゛多かった
テロリストの具体的な人数、そして、スコールは1人だけではなく、ラグナさんも一緒だと言うこと
「スコールなら、ほっといても大丈夫ね」
スコール1人だと、ちょっと心配だけど、二人一緒なら大丈夫かな?
「そうだ、最終的な判断はあの二人に任せて問題はないだろう」
確かに僕達が、参戦するよりも、あの二人に任せた方が危険は少ない
人質と一緒にいる所に踏み込んだらまずいもんね
1人や2人ならともかく、人質の数が多すぎる、適当に銃を撃てば誰か1人には当たるかもしれない
「まずは、爆発物の扱いだ」
うーん、危険だけど、やっぱり撤去していく時間はないと思うな
「すべてを撤去してからでは遅すぎるわ」
アーヴァインが口にする前にキスティスが先に答えた
「まずは建物内のテロリストを一掃するにとどめておくべきだろう」
爆弾は爆発させなければどうにかなるからね
「保安室に管理室だったね?」
重要な場所っていえば、その2つ
占拠する場合は、重要施設から攻めるのはセオリーのはず
「そうだ、我々は、管理室に向かうつもりだったが……」
「それなら、私達が保安室に向かいます」
「ひとつ作戦を思いついたのだが……」
どのルートを通るべきか、考え始めた時、キロスさんから一つの提案がされた
その作戦は、うまく行けば確かに物事が有利に進むはずだった
……きっと、実行しても大丈夫だよ
簡単に打ち合わせを終えた時、ウォードさんが、テロリストが現れたという合図を寄越した
 

 
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