英雄と契約
(依頼 SideS)
遺跡に向かったSeeD達が戻ってきた
そのニュースはガーデン中を駆けめぐった
SeeDの選出は通常ガーデン側に任される
相手が提出してきた値段
任務の内容
そしてSeeDの実力
すべてが考慮された上で、その任務につくSeeDが決められる
もちろん、依頼の内容の難しさに見合わない値段が提示された時
――――――値段設定が高い場合は問題ない、ガーデン内でこの場合は低い時のみを指す
その場合は相手先に丁重に断りを入れる
そのシステムのおかげで、SeeD達にも余程の読み違えがない限り、任務に失敗する等と言う事態は、最近は無くなっていた
だからこそ、よほどの有名人でもない限りは、任務から帰還したSeeDが話題にされることもなく
さして注目もされず、いつの間にか日常生活に戻ってきているのが慣例だった
だが…………
彼等の帰還は、学生達の注目を集める結果と成った
それが示すところは、すなわち
―――任務の失敗
強大な敵が存在しなくなってから、久しく聞くことの無かった言葉
依頼されたソレは、モンスターの駆逐というさほど難しいとも思えない任務
“失敗”という意外さに驚き
“なぜ?”という思いの元に、彼等は不本意な注目を集めた
帰還したSeeDの姿は、ひどいモノだったらしい
全身に傷を負い、ぼろぼろに傷ついたSeeD達がシドの元へ向かってから長い時間が過ぎた
ひそひそとうわさ話をする声
スコールは、ちらちらと向けられる視線を感じていた
何かを聞きたそうな人々
視線を故意に無視し、スコールは人気の無い場所を探し歩く
俺だって知らないんだ
知っているはずだという思いこみ
きっと1度捕まれば簡単には解放されない
声をかけられる事を避けるため足早に人々の間を歩き去る
急ぎ足で歩くスコールに、人々は遠慮する様に声を掛けるのを止める
ガーデンの出口へと足を向けたスコールの視界に、スコールを呼ぶ人影が見えた
……気づかないって訳にはいかないか……
見知った友人の姿
心の奥でため息をつき、いやそうに足を向ける
「なんの用だ?」
いやいやながら声をかけた瞬間、スコールを呼び出す放送が入った
「…………という事です」
シドの言葉に、あきれたようなため息と、諦めの声があがる
「それで、そのモンスターってのは、どれくらいいるんですか?」
予想以上に大量に発生していたモンスター
先に派遣されたSeeDは、予測を遙かに上回るモンスターの数に対応することができず
簡単と思われた任務に失敗した
「それが倒しても倒してもきりがなかったというくらいで……」
シドは言葉を濁し、はっきりした事を言おうとしない
詳しいことはわからないってことか
シドの態度にあきらめと、いらだちを覚える
スコールと同時に呼び出されたキスティスが非難の視線をシドへと向けていた
今回、呼び出されたのは、キスティスとアーヴァインそして、スコールの3人
SeeDの任務のために呼び出される事は滅多にない3人が集まっている
「油断ならないってことだよねー」
アーヴァインが天を見上げる
誰からともなく聞こえるため息
「……詳しいことは直接本人達に聞いてみて貰った方がよいかもしれませんね?」
飄々としたシドの答えにスコールは冷めた目を向ける
……言われなくてもそのつもりだ
スコールがシドに背を向け歩き出すのとほぼ同時に、アーヴァインもまた、扉へと足を踏み出した
「ちょっと!」
キスティスの声が背中に当たる
もう聞くことも無いだろう?
スコールは、アーヴァインと共に早々にシドの元を退出した
次へ そのときのラグナは?
|