(エスタ深部 SideL)
エスタ大統領官邸の奥深く そこにはエスタ建国当時―――建国以前からの膨大な資料が収められている 魔女アデルの魔の手から隠された資料の存在は、エスタ政府幹部でも知るものは少ない そして、そのさらに奥に、もう一つ厳重に封印された資料が収められていた ラグナがこの場所の存在を知ったのは偶然 ここは、ラグナ以外の人間は誰一人として知らない場所 隠匿されたセントラの極秘資料 滅びを迎えるその時に運び込まれ隠されたもの 未来に伝えるべきとされた、セントラの歴史書、秘密がここには保存されている 『ちょっと調べ物をしてくる』 そう言って、ラグナが執務室を後にしたのが1時間ほど前の事 調べ物と称して、ラグナが書物の数々を読みあさるのは、就任当初からの息抜き 急ぎの仕事でも現れない限り、2、3時間は邪魔をする者はいない 滑らかな曲線の中に納められた資料の数々 さりげなく組み込まれた機械に小さく文字が表示される セントラという国が瓦解するその理由 あの時に何が起きていたかの報告書 元凶となった出来事、そのきっかけ セントラか綴った真実は全てここに納められている ラグナは、時折感情を浮かばせながら、それを読み込んでいく 知っていた事、知らなかった事 心がぎりぎりと締め付けられるような感覚 モンスター 全ての始まりはモンスターの襲来 この地には存在しなかった異質な存在が世界を破壊して行った 遠く意識の向こう側で、後悔する声が聞こえる 何千、何万回と綴っただろう詫びの言葉が聞こえる 「仕方ねぇさ、あんたのせいじゃない」 きっかけは些細な偶然 二つの世界が交わった、それだけの事 遠い未来に起きることを予測できた筈がない 誰一人、何が起きるか把握できる筈はなかった それにアレは些細なきっかけ 滅びへ向かうには、まだまだ多くの行程が存在している そのいずれかで、道を違える事だってできた筈だ 結局、違えることなくここまでたどり着いたけどな 残されている過去の資料 残されている過去の情景 今では欠片一つ残されていない、セントラの街並みが見える どこかエスタに似た形 けれど、エスタとはまるで違う空間 ラグナの手が、映像を止める 指示に従い機械が動き、広げられていた資料の数々を収納していく 立ち上がり、空間を後にするラグナの背後で、座っていた筈の椅子が消え、机が消えていく 外へと足を踏み出すと同時に、扉が跡形もなく消えていく 目の前に広がったのは、整理もままならないままに保管された資料の数々 ラグナが伸ばした手がつかんだのは、エスタ建国の書 資料室の片隅へと設けられたソファーへと座り、ラグナはページをめくりはじめた |