英雄とセントラの謎
(住処 SideS)


 
海岸線に沿うような形で、その家は存在していた
幾つかあるという定住者の“家”
家の周囲を高く覆う壁
家のすぐ側に在る海の存在
幾つかの、モンスター避けの装置
どこか記憶の奥に在る、孤児院に似た風情の建物
スコールの呼びかけに応じて、家の中から年配の男性が顔を覗かせる
「何者だ?」
鋭い眼光がスコールの姿を見つめる
「セントラの話を聞きに………」
「セントラの話等、話せる様な事は何もない」
素っ気ない言葉と共に、扉は閉まろうとする
「いや、セントラのモンスターの件について―――」
とっさに掴んだ扉
閉じようとするそれを無理に押さえて、口早に古代セントラの話を聞きたい訳では無いと説明する
用件を告げるスコールの顔を男はじっと見つめる
「モンスターの話、それを聞いてどうする?」
瞳の奥に浮かぶ、あきらめの色
話を聞いて?
調査を命じられている訳じゃない
討伐を依頼されている訳じゃない
話を聞いて、どうするつもりだった?
問いかけに戸惑いが浮かぶ
「まあいい、中へ入りなさい」
勧められるまま
スコールは家の中へと足を踏み入れた

「この地に住むモンスターは集落を狙う、その話は事実だ」
かつて、セントラの地にもいくつかの村や町が存在した
だが今はソレは無い
一定以上の規模になるとどこからともなく現れるモンスターのため―――
モンスターは全てを破壊して、何処かへと散っていく
歳月が過ぎ、もう大丈夫じゃないかと抱く期待
人々は期待を抱き、村を作り
どこからか、モンスターが現れる
長い間繰り返されてきた事
「つい40年程前にも、同じ事が起こった」
どこからともなく現れたおびただしい数のモンスターの姿
ただ、逃げまどい
ただ、助けを求め
見たことも無いモンスターの姿に、打つ手は無かった
「あの時は事態に気が付いたエスタの人間が救援に駆けつけた」
―――魔女の脅威がエスタを覆っては居なかった時代の事
「あなたもそこに?」
淡々とした口調の裏に様々な感情が見え隠れする
怒りや悲しみの色は、きっとそういうことなんだろう
「そうだ、老人達が止めるのも聞かず、ガルバディアからの移住者の若者達と小さな村を作り上げた」
力を合わせて作り上げた村
しばらくの間続いた平穏で穏やかな日々
「老人達の忠告も何もかも忘れた頃、数年の時が過ぎた頃だ」
群れを成し襲ってくるモンスターの姿
逃げまどう人々の声
何もかもがモンスターに呑みこまれていく光景
「村があったはずの場所へ戻った自分達が見のは、何もないただの荒れ地だった」
何一つ残らない、モンスターの襲撃
徹底的な破壊をモンスターが行う?
そんな事例は一度も聞いた事がない
この地に居るモンスターは、何かが狂っている
―――人の手で操られている様だ
確信に近い推測に、心臓が大きく打つ
モンスターを操る、ソレと似たような研究
「そのモンスターがどこから来たのか、覚えて居ませんか?」
長い沈黙の後、彼の指先が一つの方向を指し示した

「モンスターの事を調べて、どうする?」
別れ際に向けられた問いかけの言葉
解らない
スコールは教えられた方向へと足を向ける
教えられたその場所には、何かが存在している
その場所で何をするつもりなのか、何故その場所へ向かおうとしているのか、スコール自身何も解らない
 

 
 
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