英雄と伝言
(エスタ SideL)


 
「起動してしまったのならば、発見されるのは時間の問題でしょう」
洞窟の奥深くに隠された施設
確かにあの場所は頻繁に人が訪れる場所じゃないが、人が訪れない場所というわけでもない
あの辺りは今はガルバディアの領地だ
誰かが発見すれば、あの場所に足を踏み入れることは出来なくなる
「鍵がなければ入ることは不可能だとは思いますが………」
開かなければ無理やりこじ開ければ良い
そう簡単に破壊することは出来ないとは思うが、面倒なことになるのは確かだ
「そう、だな………」
このまま放置しておくわけにはいかない
中に何が残されているのかは解らないが、鍵を渡され、伝言を受け取った
受け取らなければならない何かが残されているってことだ
「行かれないのですか?」
「いや、行くけどな」
行かない訳には行かない
だが、今すぐに行動を起こすには、スコールの事が気になる
何故あそこに居たのかは解らない
どういった経緯であの場所に辿り着いたのかは解らない
あの場所に居た理由は、知りたいが重要じゃない
重要なのは、あの場所が起動していたということ
いくら人目に付かない場所にあるとはいえ、稼働していれば音や熱であの場所に何かがある事は、誰かが気付いていて可笑しくない
今まで気に留める者が居なかったということは、あの場所は、あの時スコールが起動させたと考えて間違いは無いはずだ
どんな手段で起動させたのか、なんてこともこの際どうだっていい
問題なのは、起動させた事に、本人が気が付かないはずがないということ
スコールはあれで好奇心が旺盛だ
動きだした“遺跡”に興味がないはずが無い
何処まで気付いているかは解らないが………
「スコールはどうするだろうな?」
さすがに張り込んでいるってことはないとは思うけどな
関与してこないってことは考え難い
「彼の存在が問題ならば、何か依頼をしてみましょうか?」
「………依頼?」
「はい、アナタが、あの場所へと向かう間、彼の足止めが出来れば良いということだと考えます」
「確かにその通りだな」
フィーニャに言葉に頷くが
「依頼内容をどうするかが問題だけどな」
依頼を発注するにしても中身が問題だ
俺個人で頼むような用件は無い
エスタから依頼を出すならば、SeeDに依頼をするだけの根拠が必要だ
今現在、わざわざSeeDの力を借りなければ解決出来ないような面倒な事案は抱えていない
それ以前に、なるべく外部の力は借りたくは無いってのが本音だからな
俺の言葉にフィーニャがまるで考えるかの様に黙り込む
「SeeD―――彼に頼むのに相応しい依頼を作れるかもしれません」
情報を確認していたんだろうフィーニャが、力強く頷いて見せる
スコールに依頼するのに相応しい事、なんてあったか?
問いかけの視線にフィーニャは綺麗な笑顔を浮かべて見せる
「私にお任せ下さい」
どうやら、依頼内容の作成から、エスタの役人達へと言い訳まで、全てやってくれるつもりらしい
手間が省ける事に異論が在るはずがない
「頼んだ」

それから数日後、ラグナは再び、あの場所へと戻った
 
 

 
 
次へ その頃のスコール