(建物 SideS)
魔法により、モンスターはほぼ一掃された 倒れたモンスターの殆どは姿を残すことも無く、モンスターの大群の中に隠れていた扉が見えた モンスターが残らず倒されたことを念入りに確認した上で、フィーニャが扉へと歩み寄る 「そんなに警戒しなくても大丈夫だろう」 依頼人に怪我をさせないというのは当然の重要事項だが、彼女にもある程度の戦闘能力は備わっていたはずだ そこまで慎重になる理由は無いはずだ 「いえ、今回ばかりは狙われる可能性が高いのです」 スコールにのみ聞こえる声でフィーニャが答える 可能性が高い? 「私は、あの者達の“敵”ですから」 敵ならば、全員がそうだ それとも何か特別な理由があるのか? 問いかけの視線を遮るように、微かに首を振りスコールを残して歩き出す スコールはフィーニャの後姿を見送る 「それで、どうやって開けるんだ?」 扉の側からゼルが叫んでいる 「それは確認してみなければ答えることができません」 扉へと近づくフィーニャの側に寄り添うようにキスティスが歩み寄る 辺りに注意を払いながらスコールも二人の後を追う 間近になった扉を見つめる 似ている 扉に刻まれた模様が、先日見た扉と似通っている 扉を調べるフィーニャと入れ替わるようにゼルがスコールの側へと移動してくる 「側で見ていなくていいのか?」 古い遺跡を近くで見る機会なんてのはそうはない こういうものが好きなゼルなら側で見ていると思ったんだが 「そりゃ、見てたいけど邪魔になるだろ」 「そうね、彼女は専門家だもの、仕事の邪魔をするのは良くないわね」 「後で見ればいいしな」 この施設が廃棄されなければ、な 「スコール、ちょっと来てもらえますか?」 扉を調べていたフィーニャが振り返り、スコールの名を呼ぶ 「何か問題でもあったのか?」 二人にその場に留まるように告げ、フィーニャの元へと近づく 「いえ、幸いなことにこの扉が開けられた形跡はありません」 扉の正面から、ほんの少し位置をずらし、スコールを正面へと誘導する 「誰かが起動した訳じゃないってことか」 それなら、なぜ今ここが動き出したのかが問題になる 「動き出すには、何らかのきっかけが必ずあります」 フィーニャがスコールに扉へと手を翳すよう告げる スコールの手が扉に触れる 掌に伝わる微かな振動 手に触れた扉が微かに動く 「ご協力、ありがとうございます」 フィーニャの手が扉へと伸ばされ、腕に力が篭る 耳障りな音と共にゆっくりと扉が開いて行く 扉の表面に浮かんだ光が、スコールを撫でる様に走る 皮膚がビリッとした痛みを感じる 「今のは、何だ?」 フィーニャが確認する様にスコールをじっと見つめる 「おそらく、確認されたのだと思います」 確認? 「それは、危険なんじゃないか?」 側に近寄ってきたゼルが少し慌てた様に言う 「その点は大丈夫だと思われます」 「そうね、もし敵だと見なされたのなら既に攻撃を受けているはずだわ」 「………それならいいんだけどよ」 心配そうに向けられた視線に肩を竦める事で返事を返す 攻撃をされるかもしれないって点では問題は無い フィーニャが小さく首を振る 扉を開けた手段、何を手伝ったのか 触れた手の感触、伝わってきた振動、サーチされた身体 この場所がスコールに反応して動いた事は確かだ 聞いてはいけない―――聞かれてはいけない事 ゼルが率先して扉をくぐる 数歩送れて、スコールも彼等の後に続く 扉に触れた“手”、動き出した機械 扉を通過する際に、扉に重なるように記憶が浮かんだ |