英雄と伝言
(過去の情景)


 
遠い未来にきっと再生されるだろう伝言を撮り終える
伝えなければならない事
伝えたい事
その全てではないが、私が言わなければならないことは余すことなく告げたはずだ
早く、この伝言を受け取る者が現れれば良い
この伝言を受け取るのは、私が思う人物であるなら良い
もしも“彼”でなかったのならば―――
秘匿されるべき幾つかの情報
残しておくべき伝言は幾つか用意した
ここを初めに訪れた者が“誰”であるのかによって、伝えられる内容は変わる
一度だけの伝言
ただ一人だけに向けられる言葉
だが、それは
「ただの感傷だな」
呟いた言葉に、答える声は無い
答えを返すことを恐れるように、辺りを沈黙が支配している
感傷を振り払う様に咳払いを一つ
最後の重要な仕掛け
たった一つの“鍵”を仕掛ける

「さあ、しばらく休むが良い」
その時が訪れるまで
呼び起こされるその時まで
機能の停止を命じる
「おやすみなさい――――――」
別れの言葉が告げられる
「―――任せたぞ」
託さなければならない、残さなければならない様々な事
どうか、遠い未来が優しい物であるよう
見守ることもできない私は、ただそれを願おう
その時までには、全てが終わっている―――
そう出来るよう努力しよう
振り返る事無くこの場所を離れた
 
 
 
 
 
 
 

 

 
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