(2)新しい科学技術
以下の文章は、レスターブラウンの『プランB』から抜粋した。
@水資源の利用効率を1.5倍に高める。
20世紀後半の50年で世界経済は7倍に成長した結果、水不足が起きている。『21世は水の
世紀』と言われるほど、水不足がきわめて多くの国で同時かつ急速に拡大している。今後の水
政策は『供給拡大から需要管理へ』と一新する必要がある。水の利用効率を高め、人口を安定
させて、水需要を管理することが必要である。
・過小評価されている水の価値を見直す。 ・潅漑用水の利用効率を高める。
・雨水に頼る農業を安定させる。 ・生活用水や工業用水の利用効率を高める。
・世界の緊急課題として『水問題』に取り組む。
A土地の生産性を高める。
・作物を多様化して農地を遊ばせない。 ・タンパク質の生産効率を高める。
・収穫後の茎や葉を飼料に生かす。 ・土壌や農地を保全する。
・病んだブループラネットを修復する。
B炭素排出量を半分に減らす。
・エネルギーの利用効率を高める。 ・風力をエネルギー資源として活用する。
・太陽光をエネルギー資源として活用する。 ・地熱をエネルギー資源として活用する。
・水素型エネルギーを経済を構築する。 ・炭素排出量を削減する。
C社会的課題に果敢に取り組む。
世界は飢餓、非識字、病気といった多くの根深い社会問題に直面したままである。発展途上
国の人口が予測どおりに今世紀半ばまでにほぼ30億人増加するならば、人類のおかれた状況を
改善する努力も、十分な成果は上げられない。
過耕作と地下水の汲み上げすぎに支えられた国家規模の食料バブルは破綻に向かう。最富裕
層に属する10億人と最貧困層の10億人との格差は拡大し続け、国際政治の枠組みに大きなきし
みが生じるだろう。人間が一生物種として自らの個体数、つまり人口を抑制できない現状が、
大きな犠牲を生んでいる。貧困の解消は人口増加を抑制する鍵となる。小家族への移行を加速
させるような社会状況を早急に整え、教育の普及、栄養状態の改善、感染症の予防、これらの
達成に必要な知識と財源の確保を進める。
・先進国の100億ドルで世界人口を安定させる。 ・地球規模ですべての子供に基礎教育を
・エイズの予防を強化する。 ・地球上のすべての人々の健康を増進する。
・貧しい子供たちのために学校給食を実施する。
以上がレスターブラウンの“環境のバブル経済が限界に達する前に改革すべき世界規模
のプラン”である。
これらのプランを実施するにあたって、それぞれの分野のエキスパートが単独で行動を
起こしたのでは、うまくいかない。なぜなら、水、土地、エネルギーという生態系の物質
循環に関わるすべてが対象であり、さらに社会制度や教育、医学というソフトが不可欠だ
からである。
ソフトおよびハードの各分野のエキスパートがチームを組んで、連携してプランや課題
に取り組む必要がある。その要となるコーディネーターはハードの科学技術とソフトの知
識技量を合わせた『新しい科学技術』をもった科学者を目指さなければならない。