がんばれ元気

とうちゃんと目指したチャンピオンの道




シャーク堀口のリングネームでプロボクサーとしてリングに立つ堀口秀樹
子供を宿している妻、美奈子を食わせようと努力に努力を重ねるが、うだつの上がらぬ6回戦ボクサーだった。
美奈子が出産するとき、体が弱いため出産に耐えられず、子を産んで死亡。
元気と名付けた子を育てながら必死に働く秀樹だったが、元気はいつも悲しそうに一人で父の帰りを待つ寂しい少年だった。
身寄りが無く、学歴もない秀樹が息子のためにしてやれることは一つ。5年前に引退したボクシングの道だ。
「強くたくましく元気に生きて欲しい」と願う秀樹は一度捨てたボクサーの道を歩き始めた。
そんな父親の姿を見て元気は生き生きとしていく。朝から晩まで世界チャンピオンを目指す父の姿が好きで尊敬し、生き甲斐としていた。
父を世界一強いボクサーと心の底から信じ、元気もまた一日中、トレーニングにトレーニングを重ねて、いつの日か父のようなボクサーになって世界チャンピオンになると心に誓ったのである。
「自分からボクシングを取ったら、ただのダメ親父だ。すべてを賭てきたボクシングを捨てることは
挫折だ。挫折した親父では元気に人生を教えてやれない」
秀樹は精一杯生きる姿を元気に見せることが、父親としてやれる唯一の手段と考えていたのである。
何度やっても6回戦から上がれながった秀樹が世界チャンピオンになれるはずがない。しかし、自分の
生き様を元気に見せることが出来るのはボクシングしかなかったのだ。
 6回戦ボクサー、シャーク堀口は31歳となった今、5年ぶりのカムバック戦を行った。5年前、早
く金の稼げるボクサーになって美奈子を食わせてやらなければならないと言う、焦りに焦った頃とは違
っていた。カムバック後、2連勝。大喜びの元気の気持ちとは裏腹にとんでもない強敵とぶつかった。
 天才ボクサーと歌われる関拳児だった。あまりの強敵に秀樹はとても勝てないと感じていた。
 元気は関との試合の前、関に激励の言葉を伝えると「ご老体だから手加減してくれと言いに来たのか?
と関は秀樹を馬鹿にした。尊敬する父親であり、夢でもある父を馬鹿にされた元気は関に殴りかかるが
とても子供が勝てる相手ではない。言いように殴られて追い出されたのだ。
 試合直前。元気の腫れた顔と、関の「世界チャンポンになるんだってねー。シャークのおじちゃん」
の言葉に自分をバカにされたあげく関に殴られた事を知った。尊敬する自分を馬鹿にされ殴られ、そし
て自分が負けては元気があまりにも惨めだ。そう思った秀樹は「死んでも勝つ」と言う執念に燃えた。
なりふり構わずパンチを繰り出し、関の強打と相打ち覚悟で激戦。打っても打っても向かってくるシャ
ーク堀口に関は恐怖で青ざめた。簡単に勝てるはずの相手にパンチを浴びる。
 3回、悲劇的なことが怒る。執念と化したシャーク堀口に放った捨て身のパンチで秀樹はロープの外
に叩き出された。そのとき後頭部を強打。よろよろとしながらそれでもリングに向かう秀樹に関は恐怖
でふるえていた。何という執念・・・。しかし、秀樹の頑張りもここまで。ついに力尽きてキャンバス
に沈んだ。
 試合後、意識不明となり救急車で病院に運ばれた。病院に運ばれた秀樹は一時的に意識を回復し、元
気をつれて遊園地に出かけた。いつも自分のまねをしてボクシング、ボクシングと明け暮れ1度も子供
らしい遊びをさせたことがないと思った秀樹は遊園地で遊んだ。勿論、関と激しい戦いをしたなどと言
う記憶など無い。そして遊園地のベンチで座ったまま秀樹は死んだ。
 夢である父が死んだ元気の気持ちは大変なショックであった。そん中、死に追いやった関が元気の元
に現れた。「これが勝負の世界さ。文句有るか?」この言葉に元気は怒りに燃えた。
関に殴りかかり関の顔面をめった打ち。何発も・・しかし関は無抵抗で元気はふと殴るのをやめた。
「もっと殴れ」関ははじめから元気に殴らせるつもりだったのだ。
「俺は初めて怖かった。俺はうぬぼれていた。君のお父さんに男の執念の恐ろしさを教えられた」
そして元気の前に土下座して「申し訳ないことをした。君にも君のお父さんにも失礼なことをしてしま
った」と深々と頭を下げた。
元気は「いいよ。正々堂々と戦ったんだ。言い試合だった。父ちゃんもきっと満足しているよ」
そう言った元気は関に代わりに世界チャンピオンになってくれるよう頼んだ。このとき、関は17歳
元気5歳。後に無敵の王者となる関を元気は追い求めることになるのだ。


芦川先生と三島栄司へ続く

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