がんばれ元気

三島栄司と芦川先生




元気は父が死んだため、母方の祖父母に引き取られた。祖父母は死んだ秀樹を憎みボクシングを毛嫌い
していた。しかし、元気に対しては死んだ娘の子として跡取りにしたいと考え大切に育てていた。
祖父母は莫大な遺産を持つ財閥家だったのだ。
 祖父母が嫌うボクシングを元気は5年の間、かくしてトレーニングしてきた。元気10歳。大きくな
ったら父のようなプロボクサーになって世界チャンピオンになる夢を捨てていなかった。
 そんなころ、小学校ではクラスの担任である女教師、芦川先生に元気がひいきされていると噂をたて
られ不良グループに絡まれることになる。芦川先生は美人で学校中の人気者だった。それ故に嫉妬が原
因だったのだが、祖父母を心配させぬため元気はボクシングを喧嘩の道具としては使わなかった。自分
を可愛がり、いつかボクサーを目指して悲しませるだろう祖父母に迷惑をかけないようにと言う思いだ
った。しかし父の肩身のグローブを踏みつけにされた元気は暴れて全員殴り倒してしまう。
 元気がボクシングをやっていることに気づいた芦川先生は田舎のジムにいる元ボクサー、三島栄司を
紹介する。
 三島栄司は芦川先生の恋人だった。元気は知らないが、昔、芦川先生を関拳児と争って叩きのめされ
たボクサーだった。関との試合で完敗した三島はボクシングを捨てやくざの用心棒にまで身を落とし、
傷害致死、前科二犯。しかし、芦川先生が選んだのは三島に勝った関ではなく、三島だった。酒におぼ
れる三島を見守り続けていたのである。元気が関を目標としてボクシングを続けていることを知れば、
三島が立ち直るのではないかと期待を寄せていたが、一向にその気配さえ見せなかった。
 ある日、ジムのボクサーがチンピラ相手に暴力をふるったとして暴力団が元ミドル級プロボクサーを
連れてジムに殴り込みに来た。
 三島は関に敗れ、やくざにまで身を落とし、背中に入れ墨を彫った自分では芦川先生をしあわせには
出来ないと思い、芦川先生の元から消えるために暴力団全員を叩きのめす。フェザー級である三島が、
ミドル級ボクサーを見事なテクニックで打ちのめした事で、元気は三島にボクシングを教えてもらいた
いと願った。そんな願いもむなしく、三島は傷害罪で刑務所に留置されてしまう。
 三島栄司にボクシングを習いたいと願う元気は一日も欠かさずトレーニングに励み三島が帰ることを
待ち続けた。
 三島が帰ってきたのは元気15歳の春だった。元気は日々のトレーニングで自信をつけていた。しか
し三島は病気で血を吐いているところを知ってしまう。三島は自分が病気であることを芦川先生に言わ
ないよう元気にくぎを刺すが、元気は不安であった。
 元気は三島がいない間、トレーニングを続け進歩したところを三島に見せた。
「プロになって世界チャンピオンの関拳児と戦いたい」そう三島に言った元気は、ジムのプロ山谷にも
負けないことも、後にボクサーを目指すライバル火山尊にも勝てたことを自慢した。
「相手のパンチがスローモーションのように見えるんだ」
三島は元気とスパーリングを行った。見えない・・。三島の早いパンチが元気の顔面に直撃する。
「堀口、パンチがスローモーションのように見えるんじゃなかったのか・・・」
元気は滅多打ちされて何度も倒されてしまう。そして三島は元気をサンドバックの前に正座させて
「堀口、俺のパンチが見えるか!」そう言ってサンドバックを叩く。元気の目には何も見えなかった。
「見えません」
三島は元気の自信を砕いた。
「山谷にも火山にも勝てた・・?その程度で有頂天になりおって!。その程度ですぐにプロに通用する
と思ったのか!!そんな甘い考えでは、お前が対戦したいと言っている関拳児は永遠に届かぬ雲の上の
存在だ。プロを甘く見るな!!」
元気は自信を砕かれたが、うれしかった。本当のボクシングに初めてふれられたからだ。
しかし・・三島の体は病が日増しに悪化していった。そして最後の命を元気に懸けることを誓った
「この手で世界チャンピオンを育ててみせる。この命、続く限り!」


三島栄司の死に続く

拳キチ伝言板

 
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