セクハラ

 最近のクラブの練習はにぎやかである。春にもなると練習生が膨大に増えて教えるのが困難なほどになっ
ている。しかし今年は特別でドカッと20人も私に教えてほしいとやってくると手に負えない。今現在、女
性練習生が4分の1もいるのには驚かされる。やはり世の中、女性は強くなったのか?そんな忙しい毎日を
送っている私は二人の女性の明るさに元気づけられる。練習に来るたび楽しんで練習を続ける彼女たちは少
しづつ進歩し続けている。忙しいさなか「おまえら!そんなこっちゃ世界チャンピオンになれないぞ!」と
声をかけると、「ならなくてもいいよー。」と答えが返ってくる。勿論、ボクサーを目指しているわけでは
なくダイエット、ストレス解消が彼女たちの目的で世界チャンピオンなど関係ないことである。忙しくても
楽しく練習を続ける彼女たちには必ず練習を見てやっている。「アッパー憶えるまでは頑張る」なぜアッパ
ーを憶えたいかわからないが、彼女たちはそれにこだわる。「フットワークを憶えたら次はアッパーを教え
てやる」そういいながら有望な練習生を教え始める。フフフ・・・この練習生は来年期待できるぞ。と思っ
っていた矢先、彼女たちの楽しそうな声が耳に入る。
「暑い、暑い」最近はずいぶんと暖かくなってジムも人数と活気で蒸し暑くなっている。
私は「夏になったらジムにかき氷製造器持ってきて、かき氷でも食うか?」と冗談を言うと乗ってきて
彼女たちは「いいねいいね。それいいね。でもジムにはエアコンないから暑いでしょうね」
そう言われたので私は冗談で「夏はビキニ姿で練習すれば良いべぇ」と言うと彼女たちは一言、
「セクハラ」
勿論、彼女たちは笑いながら答え、冗談で返したのだが、私はその一言でフワリッと腰の力が抜け、暑かった
そのジムで冷や汗をかいた。
私は完璧な指導者であるつもりだったが、その瞬間に私の完璧が音を立てて崩れていく思いに、かられたので
ある。               (六月一日作成)









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