減量
新年、明けましておめでとうございます。
新年早々、お堅いタイトル「減量」。ボクサーでは付き物ですが、私にもかなり縁のある事でした。私が
練習で辛い思いをした出来事ベスト3を上げれば、
1、ロードワーク。
2、減量。
3、ミット打ち。
練習でスパーリング何て4位以下です。ロードワークに付いては過去に書いてあるので、2番目に辛い思い出は
やはり減量です。今現在、ダイエットでジムに通う練習生が多くいますが、私は別にスマートになりたくて
減量したのではありません。無理な減量をして体格差を補正するためと言うよりは、どの体重なら自分が
一番動きやすいかがベストウェイトだと思います。私はベストウェイトにするために常に10キロの減量を
強いられました。左上にカッコ良すぎる私の写真が在りますが、この頃の私の体重は65キロは有ったはずです。
そこから絞って9キロぐらいが私のベストウェイトです。アマは連日の連戦で毎日計量なのであまり厳しい
減量はよくないとおもいます。しかし、どうにも他の階級は動きが良くない。それで常にフェザーの体重より
軽めに体を作るのです。
普通は試合近くまで練習で体重を落として、直前に急激に落とすのが普通の遣り方です。私の場合は少し
違います。2〜3ヶ月に渡って徐々に落としていく方法を取り入れていました。試合よりずいぶん前から
食生活をカロリーの低いものにきり変えて練習しながら食べながらウェイトをコントロールしました。
しかし、これが長い減量は精神的にも辛い。その上、試合前に体重がオーバーしていると極端に落としたりするから
凄く調整は難しい。うまくすこしずつ体重を落とせればベストですが、簡単にはいかない。
うまく行って試合が終わると単なるアホになって食いまくり飲みまくりで、体重は一気に戻る。これを節制すれば
もっと良い状態に持って行けるのですが、長い苦しみから気が抜けると節制なんて無視してしまうのです。
こんな長い減量方法を取っていた私は大変なる失敗をした事が在ります。前々から節制して徐々に体重を
落としてきたはずが、なかなか落ちない。それで朝食のみを取って、一日、一食で練習しました。しかし、
落ちない。減量大失敗、一週間前だと言うのに5キロのオーバー。もはや、一食も食う事も飲む事も断ちました。
空腹と渇きに絶えて試合前だと言うのに動かなくてはならない。1日、2日は体も軽くなって動きやすくて
調子良かったが、さすがに疲労してくる。疲労を取る必要があったが、体重は落ちずに更に動かなくてはならず
サウナもよく使い、ロードワークも無気力ながら続けて何度も体重計に乗った。普通の人なら倒れているかもしれないが
精神だけで体を支えて試合翌日700グラムオーバー。練習とサウナで更に絞って朝、起きてみたら200グラムの
オーバー。もうヘトヘトだけど、オーバーは失格になってしまうので、梅干しを含み口から唾液をだして
200グラム。試合前しおしっこが詰まった感じがしてトイレに行くが出ない。何かこんな感じが何度も
するもんなんだなっていつも思っていました。計量台に乗るとリミットいっぱいでパス。減量成功だ!
ほっとすると腹も減ってきて飯をようやくに食う。食うと言っても試合前だから軽めの食事。とほほ。
そして、次の瞬間には闘志が湧いてくる。何故にこんな減量をしてきたのか、自分の頭に浮かぶ。
「よーし。ぶっ倒してやる!」人間、満腹よりは空腹の方が闘志が湧くものだ。
ボクサーたるもの、勝たねばならぬ。相手をぶっ倒すんだ!!私はさっそうとリングに上がった。でもなんか
ボーとしている。こんなんで勝てるのか・・いや、勝つんだ!。相手コーナーを睨み付けると相手がまだ
リングに上がってこない。「畜生、宮本武蔵でもあるまいし待たせんじゃねえ」こっちはさっさと試合したいんだ。
しかし、何故かレフリーにリング中央に呼ばれる・・。「オラ・・何か悪い事をした・・??」
すると場内からアナウンスがされて「ただいまの試合、拳キチ選手の不戦勝です」私の手が高々と上げられる。
あの時のオラの驚きはなかった。オラは何のために食わずに練習してきたんだ!。何と相手が体重を作れずに
失格。オラは何もしないで勝ってしまった。この大会、翌日も勝って優勝を飾る事になるのですが、実際、
前日はもうろうとしていて戦える状態だったか分からない。
拳キチさん、苦労して体重を落として、試合できなくてガッカリしたが、戦わずして相手を倒す戦法が
ある事をこの日に知った。ま・・仕方ねえや。
あれから10数年。あれほど苦しい減量は無く、何故かあれも楽しかったと懐かしい思いに刈られますが
20キロ以上も肥えた現在、好きなものを食えるようになって「ドラえもん」と言われるのが時には悲しい・・・。
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