打ち込め! 〜アウトファイター編〜
最近はどうも私の昔話を語るコーナーになってしまっていますが、今回は久々に私がジムをはじめた頃の
思い出を語りたいとおもいます。このページに来てよく、「アウトファイター」と言う言葉を見受けると
思いますが、果たして「アウトファイター」とは何か?ご存知でしょうか??
ボクシングのスタイルには攻撃的なファイター、離れてストレートを中心に打ち込むボクサー、離れても
打ち合っても戦えるボクサーファイター(もっとバラエティですが)とありますがアウトファイターとは
何ぞや?それはヒビッて攻められないファイターの事を言います。さて、このボクサー(?)の生みの親を
皆様に紹介したいとおもいます。
私が知人とボクシングのクラブを発足させた頃、第一期生としてクラブの門を叩いた練習生、下田(仮名)
は何か変なやつだった。彼を指導した私の知人が、この練習生の初日を教えたわけだが、練習後、ひどく
悩んでいた。私がどうしたのかと尋ねると「う〜ん。あいつってセンスつぅもんあんのかな?」って言うから
笑ってしまう。この次点では気付いてはいなかったが、情熱無し、素質無し、努力無し、根性無し、勘違い
だけで世界チャンピオンを目指した男だったのだ。彼は熱烈なボクサー志願であった。
ジャブを打てば真っ直ぐ打てずカーブ。上半身は発達しているのに、下半身はバレリーナみたいにチョコ
チョコしたステップでもろい。私がボクシングを始めて最もセンスのない男がこの男だった。いくら左を
教えても不器用すぎて打てない。かっこうぐらいはたいていは出来るはずなのだが、毎日、進歩無し。
他の練習生は右ストレートを打たせても、彼にはいつまでも左だけ。どうしても出来ない。あげくに勝手に
自分で右に変えたり、左に変えたりしてスイッチしたりする。「お前、右でジャブ打ったりしていない??」
返ってきた言葉が「私はスイッチヒッターなもので・・」どうにも変な偏見を持っていて、不器用なくせに
勝手に余計な事ばかりしやがる。無理矢理、左でやらせたが、しゃじをなげるしかなかった。
あきれたか知人が右ストレートを打たせた。これで左は完璧にマスターしたと勘違いしたのか、その日の
練習後に「奇麗なコンビネーションで打ちたいですね」だとさ。こいつには分かっていない・・。
当時、全盛だった25勝23KOの国内無敵の強打者、日本ウェルター級チャンピオン佐藤仁徳の話題に
なると、こいつ何を勘違いしたのか「仁徳とスパーリングやってみたいですね」・・・あのな。
「あんなのとスパーしたら殺されちまうぞ」と言うと、突然、彼はガックリ・・。「俺って素質無いんだ・・」
素質有るとか無いとかじゃなくて、日本国内の誰でもかなわないんだよって!・・。彼は自分がマイク・タイソン
だと勘違いしていたのだ。ほんとかよ・・おい。
文字だとうまく書けないが爆笑は彼の連打だ。肘をくの字にまげて、脇を上げてこめかみのあたりから
何とも不格好すぎる連打を打つ。それがグニャグニャの連打だから恐れ入る。あのビデオ誰か持っていないかな?
あれば見たいものだ。彼は身長169センチなのに70キロを越えている。私はもっと絞るように言うと
「えっ。何故ですか?痩せたいからですか?」と言いやがる。ボクサーが痩せたいから痩せると勘違いして
いる奴がこの世にいたとは・・とほほ。
スパーリングというのはおこがましいが、17キロも軽いバンタム級の練習生とやらせてみる。自分で
ファイターだと言いやがるくせに相手の周りを「日本昔話のおじいさん」のステップみたいなのを使って
メリーゴーランドみたいに周りはじめた。見ていて、いらいら。バンタムの練習生が打って出ると、両手を
バンザイする格好で後退。恐くて攻められないのは見ていて分かったが、今度は防御を教えてくれとほざく。
ジャブもストレートもブロッキングも何も出来ないのに、相手のパンチをかわしたいと言う、とうへんぼく・・。
体は硬いし、感も鈍いし不器用ではどうにもならないが、どうしても防御をやりたいというから無視。パンチが
恐いから逃げたいのは私にも分かった。
それと何故かこの男、へんな質問を毎回してくる。私をギャフンと言わせたのはこの言葉だ。
「あの・・花粉症のときは鼻水をフン!っとリングに出して良いのですか?」そんな事、聞くんじゃねえ!
私たちはいつのまにか、新しいボクシングスタイルに気付いた。ヒビッて攻められないファイター。
アウトファイターに・・。これ以後、ボクサー志願でボクサーとして使い物にならないと気はお笑いの道を
歩ませる事にしているが、彼以後、アウトファイターは2代目、3代目と続いていくのだ。
あんましくだらない話で済みません。今回はこの辺で勘弁してください。思い出しただけで、うんざりするので。
では次回はまじめに書きます。ごきげんよう!!
えっ?彼のその後ですか?結果見えているので書く必要も無いと思うので書きたくないのですが・・・。
練習3ヶ月の高校一年の練習生とマスボクシングして、高校生のボディ打って怒らせて、右のストレート食って
KO負けしました。以上。
かつて佐藤仁徳とスパーリングをやりたいとほざいた元祖アウトファイターは名も無いはじめたばかりの
高校生にKO食らって、翌日以後、練習会場には姿をあらわさなかった。
(1月5日更新)
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