伝説!アウトファイター復活!!(後編)

我がジムで名づけられたアウトファイター。いわゆるビビッて攻められないファイターは2人も出現した。
努力無し、根性無し、素質無し、それで試合を目指すのだから恐れ入る。ジムを始めてわずかの間に2人も
現われるとは思ってもいなかった。我がジム2人目ののアウトファイターが去っていくと、ボクシングに真剣
な者が一生懸命に頑張っている。だがその1ヶ月後、何と伝説のアウトファイターは復活する。2度ある事は
3度有るとは言うが、さすがに3度も有るともはや伝説とはいわない。もう伝統と言うしかない・・・・。
3代目の練習生の名を敷地(仮名)と言う。敷地は東京で某有名ジムで練習していたと言う。均整のとれた
体型。身体は逆三角形で下股が長い。この体型とその風貌を見ただけで素質は十分だと感じた。しかし、
シャドーで動けば、膝は固く、腰が高い、スタンスも広く、下半身がまるで出来ていなかった。非常に不器用で
パンチは手打ち。しかし、こっけいで面白い事を連発する楽しいやつだった。オラが自らグローブをつけ
ブロッキングの練習になると打っていくねパンチを怖がって目を閉じ顔が後ろを向いてしまうのだ。ああ・・・
こんなスローなパンチも恐いのか・・。敷地は何ヶ月ジムに通ってもこの後ろを見るディフェンス(??)は
変わらなかった。これぞ必殺のアウトファイター・・・。(三世)
ジムの選手がディフェンスの練習の相手に敷地を起用する。パンチは重い。選手がディフェンスから反撃
に移る動作をしたたけで目をつむって後ろを向く。なんじゃこりゃ・・・。シャドーボクシングで連打しろと
言うと小さくパンチを回転させて後ろにバックしてしまう。「おい。何故に攻めて後ろに後退するんだ」と
言うと「こっちの方が打ちやすいから」と言う。「おい。前に詰めていくんだよ。攻めて押されてどーするって
言うんだ」「ああ・・そうっすね」ぎゃふん
なんかへたくそだけどこっけいな練習生である。1年たってもまるで進歩無し。次第に自分と一緒に始めたもの
自分より後から始めたものに抜かれていってしまう。しかし、さすがに敷地も寂しいとおもったのだろう。
それを挽回するそのチャンスは無い。しかし、この敷地のパンチは異常に強いのだ。ミット打ちでは凄い音を指せて
ジム中に響くのだ。「よーし。右ストレートを打ってこい」私がミットを差し出すと、何と打ってきたのは
左フック!オラが構えている右腕の横からパンチが来てオラの肘が捻じ曲がる。「イテエ〜。このアホ!」
「すんません」ちなみにオラの肘は2〜3週間使い物にならなくなった・・とほほ。
ある日、関東から宮城に戻ってきたと言う某プロのジムの練習生が我がジムに入門してきた。身長はバンタム。
しかし、その練習生はスーパーライト級でプロテストを5回も受けていると言っていた。勿論、5度とも不合格。
シャドーも本気じゃない。サンドバックも遊び程度で叩いているだけ。こんな練習生がプロテストを受けさせても
らったとは。この練習生がマスボクシングをやりたいと言ってきた。「ディフェンスに自信があります」とか
言ってきた。体格はともかく体重だけなら敷地が一番近い。「おい、敷地マスをやれ」。
マスボクシングが開始されるとその直後にパンチだけなら以上に強い敷地の左フックが顔面に炸裂する。
「おーい。これはスパーじゃ無いぞ」しかし、無視して打ち合う。ディフェンスに自信があるとほざいた
練習生の動きが止まる。敷地はこのままじゃ行けない。俺もボクサーを目指すんだって気持ちが前面に現われ
相手を圧倒。何とビビって攻められないアウトファイターは攻め勝ったのだ。5度もプロテストを受けた
練習生は「あの人、強いですね」って、おいおい。アウトファイター交代しろっちゅうの。
5度もプロテストを受けさせたのはどのジムだぁぁぁ。アウトファイターより弱いじゃん。そしてそれからの
敷地は人が変わったように変わった。必死に練習してスパーリングさえこなすようになった。そして試合を目指して
猛トレーニングに励んだ。しかし、数ヶ月して敷地は練習の最中に行方不明になって消息を絶った。そして
しばらくしてジムを辞めると言ってきたのだ。家庭の事情で働くためにジムにはもう来れないと言ってきたのだ。
ああ・・せっかく本気になったのにもったいない。

我がジムでは彼を最後に「取りあえず」アウトファイターはいなくなった。ちょっと寂しい気がしたのは
最近である。伝説ではなく伝統なのだから・・・。最近、ジムでは笑いが乏しくなってきたのも寂しい・・・

(1999.7.26更新)

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