やがて、のそのそと姿を現したモンスターは想像以上に、大きかった。

例えるならば、蟻と人間。

本来人間であるはずのロイド達の姿が今では蟻のようにしかみえないのだ。

「これ、・・・でか過ぎだろぉ!?」

思わずロイドは半ば呆れを含んだ声を上げる。
幾多の戦いを切り抜けて来たといってもこれほどのものは初めてだった。

「こんな奴どっから出てきたのやら・・・。
 あたし達を狙ってる奴でも居るのかねぇ。」

「その考えはあながち外れでは無いかも知れぬな。」

「ええ、これほど大きなモンスター、
 誰かが故意に操る以外で出現するとは考え難いわ。」


声音は穏やか。

しかし、顔には皆2割ほどの感嘆と5割ほどの呆れが滲んでいた。
その他はと言えば、体躯の差と圧力による焦りである。

すぐさま戦闘の態勢を取る一同。
しかし、どこからどう手を付ければ良いのかすら解らず、困り果ててしまう。

「どうやって戦えば・・・。」
「なんか、こうも見下ろされてると腹立つなぁ!どっかのアホ神子みたいだよ!」

「・・・そういえば先程から大人しいな、神子。」

確かに、とロイドとジーニアスは辺りを見渡してみる。
だか、その視界にゼロスを見つけることができない内に目の前の巨体が蠢動した。

「ロイド、危ないっ!!・・・エンジェル・フェザー!!」


巨体から見掛けに寄らず、俊敏な拳が振り下ろされる。


それを間一髪でジーニアスを抱え上げ、ロイドはバックステップで回避。
直ぐに後方から声が響き、辺りに天使術の光が広がった。

「サンキュー、コレット!」
「ロイド、また来るよ!」

「・・・援護します。フィールドバリアー!」

コレットの天使術を受けた敵は苦しげに咆哮している。
巨体がもがく度に地割れが起こりかねないほどの振動と弾丸のような石が降り注ぐ。
それになんとか持ち堪えるために、
リフィルは仲間達のいる空間に防御壁を造り出した。

「今度はこっちから行くぜ!魔神、双破斬っ!」
「僕も行くよ!・・・アイストーネード!」

ロイドは勢い良く敵の足元に飛び込み、気の篭った剣撃を浴びせる。
そして、追い撃ちをかけるようにして
絶対零度の冷気と氷の粒が周囲を吹き抜けるようにして巨体を包み込んだ。

「これで最後だ!・・・獅吼翔破陣!」

倒れる寸前の敵と決着をつけるために渾身の一撃を放つ。



やがて、容赦無く続いた攻撃の数々に堪えきれずに、敵は断末魔の叫びを上げた。

「・・・終わった、か?」

緊張の糸を限界まで張ったまま、ロイドは敵の様子を確認する。
そして、流石にもう動けないだろうと仲間達に声を掛けようと振り返った。

しかし、しぶとく叫び続けていた敵は急にその体を勢いよく翻した。

「まだ何かしようってのかい!?」
「危ない・・・!」
「どうしたのだ?プレセア。・・・!」

背を向けて突進する敵。
プレセアとリーガルはその向こうにひとつの影を見てとった。








瞬間。








「・・・!っ、ゼロス!!!」







ロイドは無我夢中で駆け出していた。

















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