クラトスが立ち去ったその場に残されたロイドとゼロスはしばらく話をせずに止むことのない雨音に耳を傾けていた。
お互い、話をしようとも思っていないらしく、相変わらず沈むように暗い闇の中でほんの少し距離を置きながら。
そのほんの少しの間には強く握り締められた右手と左手を放り出して。

「・・・雨、止まないな。」
思い付いたようにロイドが口を開く。
いつもとは違った静かな雰囲気をもった声で。
「ん、そーだな。・・・ロイドくん、怒ってる?」
「あぁ、まあな。」
ロイドは敢えてゼロスの言葉が何に対してであるかは聞かずに答えた。
ただ穏やかな表情で遠くを見つめながら。
その様子から怒っているといった雰囲気は未塵も感じられないが、繋いだ手の感触からゼロスには何か伝わっているようで、
「・・・ごめんな。」
と小さく呟いた。
その表情もまた穏やかで微量の喜びを湛えている。
静かに過ぎるふたりきりの時間。
この雨がいつまでもやまなければ良いと願ったのはどちらが早かっただろうか。
「・・・ロイド?」
「ん?」
「大丈夫か?」
「何が。」
繋いだ手から伝わるのはお互いの体温。
そして、微かに震えているその振動。
「手、震えてるぞ?」
「そうか?」
そう答えた声もかすれていたがゼロスはそれ以上聞くことはしなかった。
聞けばきっと自分の声も震えていると気が付かれてしまうから。

また空間を支配していく沈黙。
直接触れている訳でもないのに聞こえてくる雨音ゼロスは身が凍えてしまいそうな錯覚を覚えた。

「・・・ロイド。」
「ん?」
「ロイド。」
「・・・ゼロス?」
ロイドの名前を呼ぶ声に震えは無かった。
ただ繰り返し紡ぎ出されるその名前。
「俺さま、今・・・生きてる、よな?」
途切れ勝ちにゼロスの発した言葉にもロイドは振り向くことはない。
そのかわり、ゆっくりと目を閉じて。
「ああ、生きてる。・・・ちゃんとお前が生きてるってこの手に伝わってくる。」
「・・・そっか。良かった。」
一層その手に力が籠る。

もう離さないと訴えかけるように、強く。



































next