「それで、どうするの?」
問いかけの言葉に、首をひねる
「どうするって?」
久しぶりにゆっくりとした時間
夕食後のひと時、前置きも無く問いかけられた言葉に首をひねる
何かやらないとならないようなことがあったか?
「あーー、忘れてるんだ」
テーブルの上にカップを置いて、大げさに肩を竦める
「忘れてる?」
そう言う様子を見る限り、そんなに重要なことじゃ無いみたいだが………
少し考えたが、思いつくことは無い
「何だった?」
笑みを含んだ目が近づく
「お手上げ?」
お手上げだ
肩を竦めて手を上げる
「あのね………」
楽しげに笑いながら潜めた声が告げる
「そういや、そうだったな」
告げられた言葉に壁に飾られたカレンダーに目を向けた

ジュっと音を立ててフライパンの上で肉が焼ける
鍋から吹き上がった湯気が美味しそうな匂いを運ぶ
オーブンが音を立てて、出来上がりを告げる
「美味しそうな匂いよね」
向こうの部屋から、明るい声が聞こえる
「………料理なんて、出来たんだな」
複雑な感情を含んだ声が聞こえる
そりゃ、な
作らない訳には行かなかったからなぁ
「ただ、美味しいかどうかは知らないけどね」
「そう、なのか」
とまどったような声
皿の上に出来上がった料理を載せる
見栄え良く、とか
飾りつけ、なんてのは
「まぁ、しゃーねーな」
二人とも俺にそこまで期待しないだろう
「おーい、手伝ってくれ」
二人に向かって、声をかける
「はーい」
「………」
返事は一つ
動き出す気配は二つ
軽やかな足音が近づいてくる
どんな反応が返ってくるのか目にするのは少し怖い
「悪いけど、運んでくれないか?」
背を向けたまま掛けた声に、素直な賞賛の言葉が聞こえた

聖なる夜
家族だけで静かに過ごす日
『何をするの?』
問いかけの言葉にすぐに返事は出来なかった
ただ、誰にも邪魔されず過ごすことを考えて、思いついたのは家族での“食事”
『んじゃ、料理でも作ってみるか』
言った言葉にひどく驚かれた

「美味しいね」
笑顔の言葉に、頷くだけの同意
「そっか、そりゃ良かった」
密かな緊張をそっと緩めて、一口
「お、けっこー美味くできたな」
口にした味は、以前作ったものよりもとても美味しく感じた