牧場


 
その子供は、辺りを見渡し悲しげな声でないた
子供が頼るべき相手は、その地には見当たらず、子供は自分が置いて行かれた事を知る
やがて、その声に遠く離れた大人達が気づき
悲しげななき声に大人達は、遠方から集まってきた
やがてその騒ぎを聞きつけ人間が集まり
ついには、ラグナの元へと連絡が入れられた
 

連絡を受けて、半信半疑で、向かった現場では、黄色い生き物が走り回っていた
……………………
………………………
その信じられない光景に息をのむ、というのではなく
言葉にするならば
“いやなものみたなぁ〜”
といった雰囲気で、呆れたようにその光景を見つめ、誰一人として口をきかない
いつまでも、ここで見ていても仕方がないと覚悟を決め、ラグナ達はしかたなさそうに、車を降りた
車から、降り近づくラグナ達に興味深そうに、ソレが近づいてくる
「…………で、これはどこから来たんだ?」
“クエッ”
これ呼ばわりした、キロスにチョコボが抗議するように一声鳴いた
「………さぁ?」
聞かれたところで、ラグナにもそんな事は解らない
街はずれにチョコボが3匹出現した
「この辺にチョコボなんていなかったよなぁ?」
そんな連絡を受けて見に来てみればチョコボが5匹……
チョコボを遠くから囲むようにして見ていた者達は、一斉に見たことがない、と答える
“クエッ!”
ラグナの足下へと近寄ってきたコチョコボが鳴く
「………なーんで、子供までいるんだろうな?」
エスタに住んで長いが、この辺りでチョコボを見たという報告は一度も聞いた事がない
聞いた事がないのだから、誰かが連れてきたと考えるのが普通っていうもので……
「誰か飼ってるやつでもいるのか?」
もしかしたら、チョコボをペットにしている人物だっている、かもしれない……
「いえ………チョコボが逃げ出したという連絡も……」
困惑したように見張りに付いていた兵士が答える
“クエッ”
コチョコボがしつこく、ラグナの足下で鳴く
チョコボ達が、動きを止めてこちらを見ているのは………気のせいだ、きっと……
…………………………………
なんか、視線がつきささるぞ……
「………心当たりは、ないのか?」
チョコボ達の様子を黙って見ていた、キロスが問いかける
人々の視線もラグナへと集まる
“クエッ、クエッ、クエッッ”
バタバタと、懸命に羽を動かして……
「………なにか言いたいみたいだぞ……」
何もそう言って、期待する様にこちらをみる見物人……
…………っていわれてもなぁ………
チョコボの言葉なんかわかんねぇーよなぁ
何かを伝えようとして、一生懸命コチョコボが声を張り上げる
「本当に、心当たりはないのか?」
……心当たりもなにも、チョコボに関わったのなんか、初めてだぞ
念を押すようなキロスの言葉にラグナは、とりあえず、腕を組み考えてみる
……………………………………
コチョコボが困ったように、ラグナの足下をうろうろうろうろ回り始める
チョコボ自体見たのがまだ2回目だしな………
初めて見たのは、スコールの………
……………………………!!
「あーーーーー!!」
思い出した、思い出したぞっ!
「心当たりでも見つかったか?」
心当たりっていうかなぁ………一緒に見たの忘れてるか?
「そういやー、スコールが1匹連れてたよな?」
こんなコチョコボを一匹………
“いるんならくれてやる”とか言われて
で、断ったんだよな、確か………
……………………………………
なんとも言えない空気が辺りを流れる
「………どーすんだ、これ?」
“クエッ”
チョコボ達が一声するどく鳴いた

忘れ物を取りに来ないか?
そうエスタから連絡が来たのは確かに2ヶ月も前の事だった
それを無視していたのは、確かに自分だ、が………
「いつの間にか増えちまってなぁ――」
ラグナの言葉を聞くともなしに聞きながら、スコールは、呆然と立ちつくしていた
目の前には、以前には存在しなかった、牧場が広がり……
「――特産物にでもするのか?」
数羽のチョコボが放されている
「……それもいいかもしれないな………」
何かを諦めた様な、珍しくも力のないラグナの言葉
目の前を力強くチョコボが走り去る
「ま、そういう訳だから、好きなだけ持っていけよ」
ラグナが立ち去った後には、チョコボを前に困り果てたスコールの姿があった………

そして、チョコボがエスタの特産品になった………かどうかは解らない

 
END