大掃除


 
雑然と放置された室内を見て、ラグナは大きくため息をついた
もともと散らかっていた部屋が先日の捜し物のおかげで、よけいに散らかっている
「今日一日で片づけるってのはやっば無理だよな……」
先日思った通り、今日は大掃除をする事にしたのだが………
「……いつまでも突っ立っててもしかたないしな」
ラグナは重いため息をついて、作業に取りかかった

「お、これこんなとこにあったのか」
数時間後、ラグナは部屋の中に埋もれていた品々を発掘していた
月日の流れと共に忘れ去られた物
増えた品々の影に隠れ忘れ去られた物
行方が解らなくなったもの
ラグナが手にしていたのは、かつて入手した品々
「ん?これなんだ?」
物陰に隠れる様に置かれた頑丈な箱に、ラグナは眼を止めた
……記憶にないよな?
この箱がどんな物を保管しているのか、全く記憶がない
箱を開けようとするが鍵がかかっているらしくびくともしない
困ったように辺りを見回したが、側に鍵が置いてある気配はない
わざわざ解る所に鍵を置いたりなんかしないよな
「……壊すか」
ここにあるってことは、覚えてなくても俺の物なんだろうし
壊しても文句言う奴なんていないよな?
……もしかしたら後悔する事になるかもしんねーけど……
わざわざ鍵を掛ける程の物
大切な物ならば、簡単に忘れたりしない
もし忘れていたとしても大切な事ならきっと思い出す
「やばい物だったりしないよな?」
今更だけど、アデル関連とか……
それだったらなおさらこんなとこに置いてねーよな?
「…開けてみれば解る事だしな」
小さく呟いて、こじ開ける為にラグナは箱を持って部屋を出ていった
後には、半端な片づけの為に前以上に散らかった部屋が残された

古い手帳、書き込みがされた地図、そしてメモや、カメラ
鍵をこじ開けた箱の中身を見て、ラグナは苦笑を漏らした
かつて旅をしていたとき愛用していた品々
ラグナは、懐かしい思いを抱きながらそっと手帳を開いた
旅をし、渡り歩いた土地の情勢
そして、エスタの……魔女アデルの動向
手帳には調べ上げた事が細かく記されている
長い間ラグナはその手帳を熱心に読みふけっていた
やがて、読みづらくなった文字から、ラグナは日が落ちた事を知った
「旅に出るってのも良いかもな………」
そう呟いたラグナの言葉を聞いた者はいなかった
 

END