消夏


 
蒸し暑い夏の夜に、涼しげな音が辺りに響く
ガラスのふれあう小さな音
微かに聞こえる音は、風が微かに吹いている事を物語っている
涼やかな音色と静かに吹き込んでくる涼しげな風
ラグナは、ソファーに寝ころび手に持った団扇をときどき思い出したように動かしている
目の前には大きく開け放たれたままの窓
ときどき強く吹く風に、大きく風鈴が鳴り
カーテンが風をはらんで大きく揺れる
風鈴の音の向こうで微かに聞こえる水音
庭の隅を流れてている小さな小川のせせらぎ
暗い夜の闇、灯りを消した室内に遠く街の灯りが見える
小さく灯った灯りは、空気の流れに微かに揺らめき
不思議な光景を作り出す
ひときわ強く吹く風が高く澄んだ音を導き出す
高く、低く、夜の闇の中へと音が吸い込まれていく
ラグナは暗闇の中、微かに聞こえる音に耳を澄ませ、小さな灯りをじっと見つめていた

どれくらいの時間がたっただろう
暗い室内に不意に灯りが灯る
振り返った先に不機嫌そうに、スイッチに指をかけたスコールの姿
眼が合うと視線で問いかけて来る
「電気消して見ろよ」
笑いながら言った言葉に
ほんの一瞬考える様な表情をして、灯りが消える
再び遠く浮かび上がる小さな灯り
「綺麗だろ?」
問いかけに返事はかえらない
でも、気に入ったみたいだな
立ち去る気配の無いスコールにラグナは笑みを浮かべる
微かに吹きこんだ風が風鈴を揺らす
不規則に奏でられる音色
音に気を取られたのか、動く気配がする
「いい音がするだろ?」
風鈴の存在をそっと告げる言葉
きっと、その存在を見つけだしただろうが、何の反応も示さないスコールに小さく苦笑する
夜を渡る風が緩やかに吹き込んでくる
次第に強弱をつけ、まるで音楽を奏でるように風鈴が鳴り始める
綺麗なメロディーに気を取られた頃
空気が動き人が近づく気配がした

やがて、無言のままの2人の間を埋める様に風鈴がひときわ高く音を立てた
 

END