隠れ家


 
『スコールが逃げ込んでいないか?』
と問い合わせが来たのは3日ほど前の事
『来てもいないし、来る気配もない』
と返答を返したのが2日前の事

滅多に訪れる事も無い場所に足が向いたのは、どういう偶然だったのか
微かな生活の跡は数日前からの存在を物語っていて、何より、部屋の片隅で目覚める事無く眠っているのは………
いつからここにいたんだろうな?
音を立てぬよう、近寄り、顔を覗き込む
広い庭園の片隅にある小さな小屋
前に来たのは何年前だっただろうか、こんな所に、こんなモノがあるという事実さえも忘れていたというのに、今日足が向いたのはどういう偶然なんだか
……こんな無防備で良いのかよ
仮にもSeeDが、人の気配にも気づかずに寝てるってのは、問題なんじゃないのか?
ふと不安になり、手を翳し呼吸を確かめる
穏やかな深い眠り
まいったな
自然に顔がほころんで来るのが解る
これだけ深い眠りにあるということは、安心しているということ、信頼されているということ
でも、指摘したら怒るんだろうな
近づいた時と同じように、静かに側を離れる
もうしばらく気づかないふりをしとくか
音も立てず、扉が閉じた

一人きりの夕食
「……出かけるっていってたっけか?」
今朝のエルオーネの様子を思い浮かべるが、どうも、そう言われた様な言われていない様なはっきりとしない記憶しか残っていない
念のため台所へ向かい、冷蔵庫を開け、鍋を開ける
「……言ってたみーだな」
暖めるだけとなった1人分よりも、少し多めの食事
頭を掻き、食事の支度を始めたラグナの手がふと止まる
「独りで食うのって味気ないんだよな……」
スコールが居るはずの小屋の方角へ視線が向く
やっぱりここで、行ったりしたらまずいよな

窓の外を気にしながら、並べられていく食事
いつの間にか、用意しているのは2人分
きっちり食料も用意してたみたいだけどさ
休憩所でしかないあの場所には、調理器具はない
明けはなった窓から、食事の匂いが流れていく
窓を開け放って、食事の用意をしてるなんていうのは、多分初めてだろう
気づいているという無言の合図
スコールなら気づくと思うんだけどな
音を立てる鍋をの火を消す
持ち上げようとした鍋が、横にさらわれていく
何事もなかったかの様に歩き去るスコールの姿
ずっとここにいたかの様に続く行動に、改めて声をかけるタイミングが無い
……やられた気分がするのは何でだろうな
声にならない溜め息と共に、窓を閉じた

何事もなかったかの様に部屋に引き上げていく後ろ姿
……きっと朝には居なくなってるんだろうな
なんとなく感じる予感
特に会話もなく過ごした時間に、スコールの意地があるのかも知れない
朝になったら、改めて小屋に向かうか
今の出来事は無かった事にして、そこからもう一度やり直しだろう
きっと、今度は起きて待ちかまえてるんだろうな
扉の閉じる音が階上で聞こえる
そうしたら今度こそ、なんでこんな所に居るのか聞かないとな
ラグナは、腕まくりをすると、とりあえず食事の後片付けを始めた
 
 

END