訪問


 
今だ謎のベールに包まれた国、エスタ
近頃は観光にも力を入れ、積極的に他国民の旅行を推奨しているが、その独特の文化は戸惑う事が多い

エスタから示される報酬がよほど良いのか
面倒な事は避けようと思っているのか
エスタに出向く仕事は、スコールが回される事が多い
最も、最近ではエスタに関する仕事は殆どまれになり
表面上の平和を保った世界では、SeeDの仕事も無い
その上、クラスが上がれば上がる程、報酬もまた、莫大な金額となるSeeDの制度では、近頃はスコールまで回ってくる様な出来事は一つも無く
はっきり言って毎日が暇だった
だからという訳では無いが、スコールは気が付いたらエスタへと向かっていた

「久しぶりだね」
そう声を掛けてきた相手を見て、スコールは眉をひそめた
「せっかく来てくれた所申し訳ないが、ラグナ君は出かけているよ」
楽しげなキロスの様子にスコールは、僅かに警戒心がわき上がる
少なくない経験から、ラグナ達3人に関わるとろくな事がないのはわかりきっている
「ラグナ君に用事じゃなかったのかな?」
思わず引き返そうとしたスコールへとキロスの声が飛ぶ
言葉を返す事ができずスコールは立ちつくす
用事があってきたと言えば、企みに乗る事になり、用事がないと言えば喜ばせるだけだ
「わざわざ来たんだ、緊急の用事だろう、遠慮せずに………」
結局キロスに押し切られ、スコールはラグナの元へと向かう事になっていた

張りつめた空気、そして緊張感が漂っている
『ラグナ君は、特別講師をしているところだ』
そう言うキロスに連れてこられたのはエスタ軍施設
特別講師の言葉も気になったが、部外者を簡単に軍事施設に入れる事がスコールには気になっていた
……何を考えて居るんだ……
すれ違う軍人達も、スコールに僅かに視線を合わせるだけで、気にとめようともしない
この国の人々のいい加減さにも随分慣れた気がしていたが、実際には考えていた以上にいい加減だったようだ
軍事施設なんていう国にとって重要な所を全くの部外者が歩いていることを気にもとめない、なんていうのは、異常な事としか思えない
得体の知れない国
他国の人々が下すその評価は確かに間違っていない
科学力が有る事は確かだし、それに見合うだけの軍事力も有る
ただ、得体が知れないと思う、その箇所が、彼等が思うところとは違っている
ラグナを見本にしたようないい加減さだ
普通では考えられない状況に、内心頭を抱えていると
目の前に出現した鉄製の巨大な扉が開いた

「ーーーっ」
身に憶えのある、空気に身体が強張る
足が止まり、辺りの様子を探る
広い施設内を覆っている、圧倒的な気
スコールは引きずられる様に身に付けている武器を握り締める
そして、巡らせた視線の先
幾人ものエスタ兵と対峙するラグナの姿が見えた

「さすがに疲れるな」
肩を回し、首を鳴らしながらラグナが疲れたような声を出した
さっきまでの強烈な気配は綺麗に消え失せている
あの姿が幻だったかの様な錯覚を覚える
……こいつ、結構強かったんだな
「それで、今日はどうしたって?」
勢いよく振り返って、満面の笑みを浮かべるラグナの姿に、スコールは深いため息をついた

数日後、開発されたばかりという武器を手に、スコールはエスタを後にした
さらに数日後、スコールから、エスタへと武器に関する細かな注文が書かれた手紙が届いた
 
 

 End