機械兵


 
時折、街中で見かける事の出来る機械兵の姿
「やっぱり柔軟性が問題になるんだよな」
実験段階らしい彼等の事を話題にした際に呟いたラグナの言葉

エスタの技術が幾ら良いと言っても限界がある
当たり前の事
だが、外から見ている人々にとってはそうでも無いらしい
エスタに対する盲信、過剰評価が聞こえる
“機械兵”に対する認識もそう
観光客の口から伝えられたその存在は、ねじ曲がって他国の間に広まっていた
曰く、エスタの兵士は半数以上が機械である、と

データの取得
巧みな言葉に乗せられたスコールは機械兵を前にガンブレードを構えていた
勿論、多少の興味もあった事はあった
……が
基本に忠実な構え
型どおりの動き
こちらの様子を探るかの様にじっと一点を見つめたまま動かない
実戦に使うつもりか?
実際に剣を合わせる迄も無く、抱いた印象
「故障してしまっても仕方がありませんから」
躊躇うスコールに対して科学者が言葉を掛けた
「…………」
壊れる事を前提にするな
微かに浮かんだ怒りの感情と共に構え直したガンブレードの動きに、微かな反応を見せる
決着は僅か一瞬
踏み出した足の動きに釣られる様に繰り出された機械兵の攻撃
機械兵の踏み込みと同時に、身体を引き距離を空けた単純なフェイント
ぎりぎりの位置で攻撃を避け、反撃に転じる
そして、そのまま………
………役に立つのか、これは?
素直に攻撃を受け倒れた機械兵を目に、スコールは内心頭を抱えた

「やはり戦闘パターンに問題がある様ですね」
淡々とした口調は、分かり切っていた結果を目にした科学者のもの
「……戦闘パターンっていうよりも……なぁ?」
いつの間に来たのか、ソファーに座ったラグナがコーヒーを飲みながらスコールを見上げる
「……………………」
スコールは無言のまま席に着き、コーヒーカップを口元へと運ぶ
「戦闘パターンの不足が問題ではない、と?」
心底不思議そうな、声
……それ以前の問題だ
内心返事を返したスコールの目に、困ったようなラグナの姿が映った

「街の警備兵の肩代わりくらいは出来るんだけどな」
道の片隅に立つ機械兵の姿を目にし、ラグナが呟く
「……本気で、アレを軍に入れる気か?」
「いくらなんでも、そこまで無茶はしないぜ………」
スコールの疑問に即答された言葉を元に、周囲に微妙な空気が流れた
 

 End