操作


 
絶対条件として提示されたのは、自分の身を優先させる事と
―――気付かれないようにしろ
彼等にも、自分達の存在を悟られない事
どういう理由で出された条件なのか、正確な所は解らない
けれど
自分達の存在、とりわけ何処に属する人間なのか知られては不味いという事は理解できる
だから、遠回しの手助け
実際に脱出できるかどうかは彼等自身の判断と行動による
スコールは目の前の制御装置へと指を走らせる
備えつけられた機械は、扱い慣れたエスタの物とは大分趣を違えている
機械が立てる、微かな音が響く
「それでは、私は次の仕事に取りかかってこよう」
その場にスコール残し、キロスは気絶した兵士達を運び出して行った

兵士達を手近な牢へと投げ入れ鍵を掛ける
さほど防音の効果は無いように感じるが、わざわざ牢の一つ一つ中まで確認する者もいないだろう
それに、彼等が目を覚まし、助けを呼んだ所で、囚人が騒いでいる程度にしか思われる事はない
騒ぎが起きなければ疑われる事もない
キロスは、すれ違う兵士に軽く声を掛けながら、ゆっくりと足を運んだ

無駄に大きい機械の前で、スコールはゆっくりと手を止めた
入力した命令にすぐさま反応が返る
コレでこの施設は思う様に動かす事が可能になった
ディスプレイが、現在囚人が収容されている部屋を赤く表示する
思っていたよりも使われている部屋は少ない
滑らかに動く指が、データの奧深くを探り出していく
次々と切り替わっていた画面が静止する
―――収容者の登録情報―――
ただ一言のみ表示された文字列
…………
微かな躊躇いと共にスコールは、データを洗い出し始めた

『どんな感じだ?』
後ろに感じた気配に振り返れば、どこからか引きずり出してきたのか掃除用具を手にしている
「………似合わないな」
清掃夫姿のウォードに、押し殺した笑いと共に感想が零れた

砂嵐に紛れた通信が届く
紛れ込んでいるのは、まずは数字
時間を置いて、続く文字
誰かが垣間見たとしても、いつも通り意味の無い映像に見えるだろう
「上手くやるんだな」
『上手く行かなければ逃げるだけだ、そっちこそ上手くやれよ』
にやりと、互いに笑みを交わし階の上下へと別れた

先ほどから一定の間を置いた、足音が聞こえる
扉が開く音、そして暫くの間の無音
時間を置き扉が開く音
そして、僅かな距離を歩く音
繰り返される物音が、次第に近づいてくる
視線を交わし、息を潜めて様子を伺う
足音が近づくにつれ、何か物がぶつかる様な音が聞こえる
そして
扉の前で足音が止まる
ガチャガチャと音を立ててドアノブが廻る
―――開かない
ノブを回す音が止まる
用があって来たわけじゃねえのか?
金属がふれあう微かな音
そして、注目する中鍵穴が動く
反射的に、扉の死角へと身体を移動させる
多少乱暴に扉が開いた
 
 

 To be continued
 
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