現状


 
―――魔女―――
その言葉は酷く複雑な感情を抱かせる
それは、遠い昔抱いた憧れの記憶
そして、畏怖
先日姿を現した魔女は、ガルバディアという強大な一国を簡単に掌握した

魔女との戦いに負けた後、何が起きたのか詳しい事は知らないが、政府機関は元より、ガルバディア軍までも、魔女の掌中に収まったらしい
「実は、ガルバディアガーデンもやばそうなんだよね」
救出に来た、というこのふざけた男が、ガルバディアの現状を語る
応戦と逃走をしながらの会話は時折途切れ、時折聞こえない
全世界に対する降伏勧告
「詳しい事は知らないけど、魔女の命令だよ」
それは、各地のガーデンへも向けられていて
各地の返答の是非を問わず、既にガルバディア軍が差し向けられたらしい
「ガルバディアガーデンってのは、そんなに人材が不足してるのかよ?」
青い空と、薄茶の砂地が視界の先に現れた
ようやく外へと続く出口が見える
「そうじゃなくてさ、ガルバディアガーデンって、ガルバディア軍と関係が深いんだよね」
外へと大きく踏み出し、足を止める
建物がゆっくりと沈んで行くが、地面はまだ遠い
砂の中から現れるんだったな
昔、通りすがりに見た砂漠の観光地の光景を思い出す
記憶よりも速度が遅いのは、さっきぶん殴った機械の1つが故障でもしたんだろう
「その軍の方は掌握されちゃってるからね」
―――そのまま、魔女の傘下に入る可能性が高いんだよ
苦しげに呟かれた言葉をかき消す様に、建物が傾きながら停止する
残り、人一人分の高さ
「故障したな」
「そうみたいね」
後ろから聞こえる説明と経過を聞くとはなしに聞きながら、柔らかな地面へと飛び降りる
ガルバディアガーデンがどうなろうと、知った事じゃない
全勢力が敵に回るのは、多少は厄介だがそれだけだ
元々バラムに籍を置いている限り、知り合いと敵対するなんていう事は良く在る話だ
知った顔で無い分、どっちかと言えば今回の方が気が楽だ
だから、そんな事よりも―――
「バラムガーデンが心配だわ」
「早いトコ戻ろうぜ」
似たような懸念を抱いたのか、真剣に提案する彼等に言葉を返そうとした瞬間、
辺りを切り裂くような音と共に、幾筋もの光が空を過ぎった
僅かな静寂
視線が、辺りを彷徨う
脳裏に描かれたのは市町の地図

そして、セルフィの悲鳴が上がった
 
 

 To be continued
 
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