バラムへ


 
通過するポイントと、通り過ぎる風景
正確に時間を計れば、いつもよりも速い速度
だが、移動する鉄道の速度がやけに遅く感じる
苛立つ気持ちが抑えられず、幾度となく繰り返す舌打ち
「少し落ち着きましょう」
落ち着かない彼等へと、キスティスが声をかける
SeeDの権限で、最高速度での移動を強要した列車は、これ以上の速度を出す事は出来ない
「きっと大丈夫よ」
まだ時間もあるし、きっとセルフィ達がどうにかしてくれるわ

音を立て、尾を引きながら飛んで行くミサイルの姿
「あれ………」
進行方向は北
目標は………
「うそ……」
力の無い声と共に、セルフィが奪い取ったガルバディア軍車両へと飛びつく
「攻撃が始まったのね」
そして何事も無かったかの様に、空は静まりかえっている
「バラムに急ぐぞ」
きつく鋭い声
「今ならまだ間に合う」
そうであれば良いという願望が入り交じった言葉
慌ただしく行動を起こそうとした彼等をセルフィの声が止めた

疾走する、列車の音だけが聞こえる
どうしようも無いとは解っていても、気持ちが焦る
「ミサイル発射阻止!」
いつもと変わらない口調で、けれど真摯な様子で言ったセルフィ
止める事なんて出来なくて、けれど、危険な事は解っていて
そして、出来るならばそうする事が最良だと気付いた
バラムガーデンまでは距離がある
どんなに急いでも時間が掛かる
ガルバディアが何を思っているかは解らないけれど、すぐさまガーデンに攻撃を仕掛けるとしたら、きっと間に合わない
「俺が一緒に行くもんよ」
セルフィに行かせる事を躊躇っている私達に気が付いたのか、そう言ってすぐに名乗り出たのは雷神
そして部外者の筈のアーヴァイン
「ほんとは、報告に行かなきゃならないんだけどさ」
どうせ、皆をつれて行くのは無理だから良いよね
簡単に言い放って勝手に同行することを決めてしまった

「静かだな」
窓の外では日が暮れようとしている
あの後、空をミサイルが行く様子は伺えない
時折見える町の中でも、ガルバディア軍が進軍する様子は無い
「大丈夫、時間有」
いつもと変わらない淡々とした風神の言葉
「………だな」
自信ありげに笑うサイファーの顔
そうね、まだ大丈夫
「少し休みましょう」
きっと、忙しくなるから
いつもと変わらない口調で言ったはずの私の声は、ほんの少し強張っていた
 

 To be continued
 
Next