気配



 
「それで、君達の用件は?」
半ば強引に連れ出された別室、エスタの人間が慌ただしく出入りする中で不意に掛けられた言葉
「え?」
私達SeeDがエスタに来た目的
それは確かにママ先生とは違う
強引に紛れ込んできた元レジスタンスの彼等とも違う
学園を出てから決して誰も口にしなかった目的
ママ先生にも―――ママ先生にだけは―――告げる事の無かった目的
誰も言わなかった筈なのに、私達が別の目的を持っているなんて、何で解ったの?
「エルオーネの事だ」
思わず警戒して、彼を見つめる私を差し置いてサイファーが一言簡潔に告げた

地上に現れた新たな魔女
けれど相変わらず魔女は魔女で、封印された魔女の存在は変わらない
簡潔にまとめられたスコールの報告と
話しきる事の出来なかったエルオーネの話
残されている昔の資料からも、魔女の存在は1時代に1人は限らない
2人の魔女の存在
この世に存在する全ての魔女が悪しき存在では無いことは知っているし、理解していたつもりだ
だが、かつて世界を侵略しようとした魔女アデル
今世界を侵略しようとしている魔女イデア
2人の魔女の間に見える相似点
魔女アデルに施された封印は力を失ってはいない
あの時と同じまま、変わることなく存在している
「緊急離脱の準備、ですか?」
大抵の奴が知らず、知っていた奴も忘れてしまった記憶が有る
魔女アデルの記録
優しく、人々の助けとなっていたアデルという名の少女の記憶
アデルという名の魔女は突然現れ、絶対的な“力”で人々を支配し隷属させた
「魔女が現れたからな、今は何とも無いがアデルが目を覚ますかもしれねぇ」
荒れた画像の中に垣間見えた魔女イデアは、何故かアデルを思い出させた
姿形は似ても似つかねぇ
きっと、すぐさまアデルを連想させたのは、気配
「………解りました、これよりしばらくの間、全職員警戒態勢を取ることにします」
宇宙に上がってきた本当の理由は
アデルの封印が緩んで、なんらかの弾みに魔女の力がイデアへ移ったって線を疑っての事だ
だが、どうやらその線は消えて無くなった
そして、地上からは緊急事態を告げる連絡
勘の良さでは定評の有るスコールまでが嫌な予感がすると言う
「ああ、アデルだけじゃなく、月の方も充分警戒しておけよ」
スコールの言う嫌な予感がどこに対してのものか判断は付かないが
今度こそ、何があっても傍を離れずスコールもエルもこの手で守る
強い決意を胸に、宇宙ステーションに残される事になる職員達へ指示を与えながら子供達の待つ部屋へと足早に移動していた

水浸しの室内から水が引き、時を置かずして室内が乾いていく
空気からも湿り気が消える頃、高く響いた解錠の音
やがて聞こえてくる複数の足音
規則正しい足音と歯切れの良い言葉
下された命令と、分散する足音
そして、暗闇に沈んでいた室内に明かりが灯る
続けてあちらこちらから聞こえてくる機械の音
強い衝撃の後に床が震動する
一瞬後あちこちから聞こえた歓声
『直ちに作戦を開始する、全兵士は作戦の遂行に全力を挙げろ』
ガルバディア沖、1つの建造物がエスタへ向かい動き出した
 
 
 

 To be continued


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