帰還1



 
エスタの状況を伝える通信が突如途絶えてから数分
外壁を叩く音が聞こえる
外から聞こえる筈の声は聞こえない
外と内を繋ぐ通信機も動かない
この状況下で考えられるのは
―――ガルバディア兵
スコールはウォードと顔を見合わせ、武器を手に取る
位置を入れ替え、エルオーネを安全な場所―――2人の間―――へと置く
相手が敵であるなら、正直に扉を開くとは限らない
開こうとする扉を開けるのに手間取るようなら、破壊してしまえば良い
攻め込む際の1つの手段として教えられた事だけれど、それは攻め込まれる際にも適応される
何処から来るか解らない
―――何処からでも来る可能性がある
スコールは辺りの様子を、機械の外の様子を必死で探る
機体に触れる音が人がいる事を伝えてくる
けれど、厚い壁は音をさえぎり人の気配を隠す
どれだけの人数が居る?
既に取り囲まれているのか、数人なのか状況がまるで掴めない
強い緊張が身体を襲う
軽い音を立ててロックが外れた
自身の鼓動が耳の奧で聞こえてくる
音を立てて、扉が開いた

頭上高く浮き上がる建造物
「逃げろっ」
先ほど牽制する様に降り注がれた銃弾
この場所へと現れたその目的が“魔女”の回収だというなら………
オルロワの声に反応した各々が身体を翻すと同時に、空から無数の銃弾が降り注いでくる
狙いを付けるでも無く、ただただ降り注ぐ弾丸
周囲で大小の爆発が起きる
救うべき“魔女”さえいなくなってしまえば此処に残るのは敵ばかりだ、遠慮する理由も狙いを定める必要も無い
今は向こうの気が済むまで、安全な場所へと身を潜めるしかない
―――もっとも安全に退避出来る場所があれば、の話だ
辺りにあるのは、僅かに存在する大地の起伏
乗ってきた車と魔女の封印装置
無差別に降り注ぐ攻撃を無事乗り切れる可能性は低い
どうやら此処まで、後の事は任せる
消えてしまうかも知れない伝言を残そうと懐を探る
爆発音に交じって少年の声が聞こえる
SeeDとはいえ完全に巻き込んでしまったな………
微かに後悔の念を浮かべた時、辺りの光景が一変した

眼前をすり抜けた銀色の煌めき
「ちょっと待ったーっ」
刃が空を切る
薄暗く狭い空間に見える人影
反射する光が、2人が武器を持っていることを教えている
「助けに来て攻撃されたんじゃ割に合わないよ」
1人が構えていた武器を降ろすのが見えた
視界がゆっくりと慣れてきて辺りの様子が見える
「………アーヴァイン?」
守られるように居るエルオーネの姿と、エルオーネを庇うように立つスコールの姿があった
 

 To be continued


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