帰還3



 
魔女の気配がする
強大な力
以前と変わらぬ気配
忠誠を誓い、魔女の騎士へと任命された者にだけ感じ取る事の出来る気配
どれほどに姿が変わろうとも
どれほど離れていようとも
自分だけは、使えるべき主をたがえる事はない
命じられるままに訪れた先
確かに感じ取った“魔女”の気配
急ぎ向けた進路の先に確かにあった“魔女”の存在
この乗り物の中へと乗り込んで来た姿は最後に見たときとは違えていたが、感じ取れる気配は確かに彼の“魔女”の気配
だからこそ、確信を抱き少しも疑う事無く護衛に動き迎え入れた
“魔女”の為に用意した豪華な椅子へと身を落ち着け“魔女”が命令を下す
―――エルオーネを探し出せ
―――SeeDを殺せ
コレまでも幾度も繰り返され、未だ果たせていない命令
そして
―――エスタを滅ぼせ
もう一つ新たな命令が下された

ガルバディアの攻撃が止んだ
何者からか命令を受けたのか
甚大な被害が起きた為に自主的に撤退したのか
判断する材料は足りないが、一時的とはいえ、ガルバディア軍が市街地から身を引いた
体勢を立て直すならば今しか無い
なんらかの手を打つならば、今が最良の時だろう
だが………
争いの結果か、あちらこちらで途切れた通信
その中にはいくつか重要な地点が存在している
「こういうのは、向いてないな」
報告を受けて、指示を出して、結果を聞いて
状況を判断して、また指示を出す
指示を出すだけ………
司令官という役職は自分には………自分達には向いていない
状況を理解したら先陣をきって動くって方が向いてるな
エスタに点在する気になる地点
連絡が途切れた箇所
重要地点、最重要地点
それぞれ動ける人間は送り込んだ、考えられるだけの打てる手は打ったつもりだ
だが、ソレでは足りないかも知れない
取り返しの付かない事態に陥っているかも知れない
連絡が取れていた時点ならまだ良かった
だが今は、状況が掴めない
思考は最悪の状況をシミュレートしていく
突然撤退したガルバディア兵に対する対処を伝えながら
脳裏は様々な想像に奪われていた

「今から最も安全と予想されるポイントへ誘導を開始します」
慌ただしい声が、機械を通じて聞こえてくる
「地表への帰還後、飛行形態へ移行、直ちに軍司令本部へ急行願います」
緊張感に溢れた声が不鮮明に聞こえてくる
「了解、そちらの指示に従います」
忙しないやり取りが聞こえる
………状況はあんま良くないな
緊張感をはらんだ声や、告げられたポイントにラグナは良く無いことが起きている事を推測する
………魔女アデルが復活したとして既にエスタを攻撃している………っていうのは時間的に難しいか
エスタを目指して落ちていった月の涙の存在
そっちの方も時期は早かったとはいえ、それなりの対策は施してきたはずだ
「嫌な感じがするぜ………」
呟きの言葉と共にラグナロクは地上へと吸い込まれていった
 

 To be continued


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