魔女アデル3



 
救いを求める声が聞こえる
真っ直ぐに伸ばされた腕が視える
私は、足を踏み出す
私は―――
また一歩足を踏み出す
魔女の元へ私を呼ぶ彼女の元へ―――

“魔女”の元へと近づいていく人影
人影の正体に、戦慄が走る
どこかぼんやりとした表情で、リノアが歩みを進めていく
歩き続ける先には手を伸ばした魔女の姿
ダメ、いけないっ
リノアが“魔女”に操られたら全ての計画が無駄になってしまう
魔女を倒すことが出来なくなってしまう!
「リノア!」
必死で呼び止める声が聞こえる
私の声、誰の声
必死の呼びかけはリノアに届いていない
私達の声に耳も貸さずに歩いていく
押しとどめようと伸ばした腕は届かない
取り押さえようと動いた身体は阻まれる
激しくなる“魔女”の攻撃
―――魔女の抵抗
リノアへと伸ばされた腕、リノアにのみ注がれる視線
まるでそこしか見えていないかのような態度
………見えていない?
攻撃の手を止め、キスティスが立ちつくす
なにか、変だわ
ゆっくりと巡らされる視線
部屋の中、仲間達の上、魔女の様子、そしてリノア
でも、何が?
疑問に首を傾げ、そして思い至る
狙われて当然の筈の私に攻撃が来ない
でも、何故?
そこに答えが在るような気がして、キスティスは仲間達の戦いに必死で目をこらした

悲鳴が聞こえる
哀しい声が聞こえる
運命を嘆く声
絶望の涙
救いを求める声
差し出した腕に必死にしがみついてくるカラダ
なぜ、手を差し伸べたのか解らない
助けることも救うことも出来ないかもしれない
―――多分出来ない
大丈夫
―――根拠のない言葉
もうすぐ終わるから
―――多分、きっと………

リノアを抱きしめる魔女の姿
ゆっくりと魔女の中へと溶け込んでいくリノアの姿
ほんの一時訪れる静寂
辺りに緊張が走る
そして―――
爆発するように広がった魔法の力
―――誰かが小さな悲鳴を上げた

 To be continued


Next