ジャンクション2



 
ある特定の人を別の特定の人の中へと送り込む力
送り込んだ先の、その人の過去を視る事が出来る
思いも、感情も、何もかもを知ることが出来る
けれど、それだけ
人を1人巻き込んで出来ることは、ただそれだけ
どれほど望んでも、その人の過去を変える事は出来ないし
どんなに願っても、声を、想いを伝えることも出来ない
ただ垣間見るだけの力
ただそれだけの力―――

風が吹き抜けていく
―――私はアデル
荒涼とした大地が目に映る
―――私は魔女
荒涼とした大地にポツリと存在する草原
―――でも、私の力はとても弱い………
望まれて、望んで、力を使ってみても思うような成果は上がらない、上げられない
私にもう少し力があったなら、そうすれば………
風が砂を巻き上げた

血の臭いがする
風が血の香りを運んでくる
遠く続く荒れ果てた大地
昔よりも広がった―――それでも小さな草原
私は望まれたことを、望んだことをしただけだった
遠くに、血を流し倒れる人の姿
争いが起きるなんて、思いもしなかった
近くに傷つき座り込む彼の姿
―――私は魔女アデル
けれど“魔女”と名乗るにはあまりにも弱い力
伝えられる様々な魔女の様に強い力を持っていたら………
親しい人達の争い
止める事も出来なかった争い
―――魔女の力を持っていたならば
荒れ果てたままの大地
―――この全ての土地を緑豊かな土地へと変える事ができたならば
血の臭いが強くなる
黒く染まっていく視界
―――力が欲しい
―――力が欲しかった
けれど………
血が流れ出す
傷つき倒れた身体から、命が流れ出していく
―――魔女は死なない
それは世界の常識だけれど………
意識が薄れていく
意識が途切れる寸前、身体がふらりと動き出した

 To be continued


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