魔女の城3



 
タイミングが掴めない
制約を受けた身体の感覚は鈍い
いつもならなんでも無い筈の行動が酷く疲れる
いつも通りの行動に生じるずれ
感覚に鈍くなった身体の動きが追いつかない
「うわっっ」
“敵”の攻撃を受けたゼルの声が聞こえる
「ちょっ、危ないっ」
戸惑ったような声が聞こえる
きっと、いつもなら受ける筈の無い攻撃
いつもなら、違える筈のないタイミング
至近距離で攻撃するゼルと、遠距離から攻撃するアーヴァインの攻撃のタイミングに微妙なずれがある
感覚が狂っているのは自分だけじゃない
仕掛けようとする感覚と、実際の動きのずれに、なかなか有効的な攻撃が出来ない
「このままじゃやばいぜ」
どうにも上手く行かない戦いの攻撃の手が止まる
「何もかもが鈍くなってるんだよね」
弾を撃ち出しながら、戸惑ったようにアーヴァインが告げる
何かに遮られているような感覚
重しを付けられたように重く感じる身体
どこかだるい手足
「………重いな」
手にしたガンブレードが重く感じる
疲労が溜まっている訳ではなく、明らかに腕力が劣っている
「ちょっとこの状態に慣れる迄時間が掛かりそうだよ」
すぐ目の前を過ぎるモンスターの肉体
鋭い一撃が空気を切り裂き、直接攻撃が当たった訳ではない皮膚に血が滲む
攻撃を避けるギリギリの距離
いつもより余裕の無い距離感が、切迫した状況を強く感じさせる
「的が大きいから当たらない事はないんだけどさ」
ぼやき声に焦りが透けて見える
殆ど間を置くことなく響く銃声
連射に向かない銃声が続けざまに聞こえる状況は狙いを付ける余裕が無いと言うことだ
「どうにか足止めっ」
攻撃圏内に近づく事の出来無いゼルも幾度もステップを繰り返している
時間があればこの状況に慣れる事が出来るかもしれない
けれど、実際に戦闘中のこの状況では、身体や感覚が慣れる迄悠長に待つ事は出来ない
スコールはガンブレードへと視線を落とす
ガンブレードの形態は2種類、切り裂く事を目的としたモノ、叩き斬る事を目的としたモノ
愛用のガンブレードは叩き斬る事を目的にしている
両手で構えたガンブレードが酷く重い
元々、攻撃の特性からして、このタイプは重く作られている
「少しの間頼む」
スコールは、敵モンスターの攻撃範囲から遠く離れた位置へと下がる
「って、マジかよっ!?」
慌てふためく声が聞こえるが詳しい説明をしている暇はない
スコールは片膝を付きガンブレードへと手を掛けた

―――戦いには臨機応変さが必要だ、幾ら使い慣れた武器だからってどんな状況でもソレが有効とは限らない
ブレードと銃との接合部分が外れる、接合部の内側から現れる銃身
ガンブレードが分離する
武器が重いなら、軽くすれば良い
今スコールの手に在るのは、只の剣
身体が重いなら、荷物を軽くすれば良い
今は必要の無くなった、弾丸などの備品を手放す
鈍くなった感覚は―――
コレは物理的にどうにか出来る事じゃない
足りない部分はどうにかするだけだ
手の中の重量はほぼいつもと変わらない
足が床を蹴り出す
先ほどよりもましな動き
状況は確実に改善された
巨大な身体を見据え、スコールはモンスターへと剣を振り下ろした
 

 To be continued


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